にちなん

哀れなるものたちのにちなんのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

まず映像。
音も絵も役者さんの演技も、すべて絵本のように進んでいくのが心地良いです。ティムバートンがすきな大人がすきな映画。

そして内容。
しきたりや世間体に縛られてる「日本」に生きる人たちには特に刺さるストーリー。

心を掴んだのは、主人公の性格。彼女は、小さく作られた世界を破り、外に出ます。
そこで、世間のルールや人間の愚かさに気づき、だけどそこから逃げずに、自分の意志を持って立ち向かっていきます。
しかし、その姿は無邪気でポジティブ、喜びや悲しみの感情を素直に受け入れながらも、つねに論理的な行動を起こすのが魅力的なのです。
彼女は決して本能だけで動いてないということ。
自分の本能が人間に備わったシステムだと解った上で、自分がやりたいように行動しています。

濡れ場が多い件。
普通なら誰もが隠そうとする人間の「獣的」な本能に、見る人を無理やり引きずり込むための演出だと捉えました。
性、暴力、残虐性、束縛、死、すべて普遍的に存在するが世間で話題にするのはタブー。
だけど、現実世界ではそれらが日常的に行われている。
そんな世界を知ったうえで、あなたはなにに行動するのか?
目をそらすか。それとも、、、身を委ねるか。

メッセージ性。
あえて人間の成長過程を、成人女性の身体で表現する、というのがこの作品のキモ。精神的な成長をうまく描いた作品だと思います。
大人が現実(自分も周りも獣だということ)を受け入れ、その土台の上で人生の愉しみ方を見つける。それこそが、人間としての最高の生き方である。
そんな哲学書のようなメッセージを、見ている大人の私達に語りかけているようでした。
ルールや過剰な配慮に疲れつつある現代で、この作品を出すのはタイミングが神がかっている。(私の過剰解釈かもですが💦)

最後に。
彼女のように生きたい。他人の目を気にして自分の嫌なところを隠すような人生は終わりにしたい。
人生を愛したい、、、。心が若返る映画です。

大人向けのビッグフィッシュ、、
にちなん

にちなん