MarySue

哀れなるものたちのMarySueのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.8
生きるのではなく、生かされることで見えることもある。

自殺した女性にそのおなかの中にいた胎児の脳を移植するという、業の深すぎる設定。魚眼レンズでの撮影は、広く映せるが歪んでしまう。世界も同じ。広く見ようとすればするほど、違和感や不条理が見える。そんな歪んだ世界でどう生きるか。

出会い、恋、性、暴力、酒、歌、知恵……etc。われわれが一生をかけて経験しうるものを、意味もわからず一気に清濁併合んでしまうベラは、下品で無意味なセックスも受け入れる。ただ、彼女も成長する。価値観を得て、言葉を知り、不条理を受け入れようとする。

哀れなものたちによる問題だらけのラストカット。何も私たちの世界には当てはまらないのに、こんなに満足するものはない。言い換えればベラたちのように成長しても完全ではない、というより完全になんかなれるわけない。それでいいんだと酒に逃げたダンカンを励ますベラと同じように、背中を叩かれている気がした。

期待以上というか、娯楽と芸術をこれほど融合させたものは初めて。くだらないR18+の箔押しに惑わされずに観てほしい。
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