THARET

哀れなるものたちのTHARETのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.8
愛と資本主義。

無知である事は自由でいて危うい。
好奇心を対価にその身で自由を理解していく主人公の姿は、一見汚れているようで、汚れを纏う事すらも知らない美しさに感じた。
まさにステイゴールド。

エマ・ストーンがここまで体当たりな役を見事演じきったなと、彼女の裏切らなさには常に脱帽です。

衣装はロココ調のようなコルセットをギンギンに締めた動きづらいドレスが主流の時代背景にも関わらず、主人公だけは肩に全開のフリルをあしらったトップスに、着脱楽なミニスカートとショート丈ブーツの異質なモダニズムを見せている。
ストーリが進むにつれてそれは、彼女が何物にも縛られない自由の象徴だったと言う事が見えてくる。その表れとして、終盤で知恵を備えた彼女の姿は長い三つ編みヘアにコンサバティブなダークドレスを装い、ストーリーを物語っている。
衣装は異質な組み合わせにも関わらずどことなく世界観にマッチしていて、不思議な空間を衣装が作り上げている。

正直なところこの映画はアカデミー賞の作品賞を受賞して欲しくない。デカダンスで滑稽な本作はカウンターカルチャーとしてアンダーグラウンドで生きる人達の餌としていつまでもしゃぶりつくされて欲しい。
最近は良い悪いも清濁呑まれていて気持ちが悪い。こう言う作品はカンヌ国際映画祭で讃えられるのが最高の終着点だと思う。

岡崎京子のpinkや庵野モヨコの鼻下長紳士回顧録を映画で見ているような素晴らしい気持ちになった。他にも素晴らしいストーリーや映像技術、衣装をあしらった映画は沢山あるけれども、自分が求めていた最高の映画を見られた様な気がして大変満足しました。

ラースみたいにもっとグチャグチャな酷いラストでも良かったなと思ったけど、これはこれでめでたしめでたし。
THARET

THARET