けんざ

哀れなるものたちのけんざのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
2.7
ベラが経験則的に人生を積み上げていくのを見て、自分が周囲の庇護や教育なしにどんな人格を形成できたんだろうと考えてしまった。

娼婦という現代で忌避される女性の生き方を選んだベラを哀れむのは、彼女の人生を決まりきった型に押し込めることで支配欲を満たす行為でもあるから避けるべきだと思っている。ただ自分はどんなに取り繕ってもベラ(手術後)の考え方や生き方を正面から肯定することはできないし、マックスのように懐広くヤ◯◯◯を受け入れられる人間でもない。ベラのセックスは見ていて全く魅力的に感じなかったし、理性は人間としての美徳なのだと再認識する。

障がい者の夫婦が障がい者の子供を産み、健常者のケアラーが3人の面倒を見てるっていうニュースを見て心が沈んだのを思い出す映画だった。障がい者は幸せになる権利がないなんて言うつもりはないけど、周りが歩調を合わせて疲弊していくのは正直見てられない。その一方で自分が当事者だったら、周りから子供作るなって言われてムカつくのが分かってるのもしんどい。それは健常者のポジショントークにしかならないから。

作品自体のインスピレーションには深く心を打たれつつも、登場人物誰一人として感情移入することはできなかったのが残念。
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