FUJIIYOSHINORI

哀れなるものたちのFUJIIYOSHINORIのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
奇想天外な設定だし映像や音楽も独特なんだけど、観ているうちに馴染んできてどんどん気持ち良くなる映画体験。
とても本質的なメッセージの詰まった面白い作品だった。
ベラとゴドウィンの関係性が興味深い。

世の中も人間も、ろくでもない哀れなるものという事を前提として、
人は自分の欲望をコントロールし、知性と科学の進歩によってより良い自分になろうと努力することが出来る。
そして、自分で到達することの出来なかった場所へは次の世代に希望を託すことが出来る。
そんな、人が本来持っているであろう良心を強く信じている人間讃歌的な思想が根底にあるように思った。

ベラの、大人の身体に胎児の脳を移植された人造人間という設定は、生まれ持ったアイデンティティは作り直すことが出来るということ。

クラシックなモノクロから美しい色彩のカラーに切り替わるシーンは、幽閉状態だった屋敷での生活から、外の世界のあらゆるものに触れ自ら探求し発見していく重要なビートスイッチ。

航海の途中で立ち寄った、社会の縮図感のある場所のシーンは印象的。
貧富の差の埋められない深い溝。
安易な善意を中抜きにしてしまう構造。

なんといっても熱烈ジャンプ。
性愛についてこの映画のように公にフランクに語りたい。
ただし、ベラのように後に愛が全てだと知った上で。
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