延々と歩く

哀れなるものたちの延々と歩くのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.7
 「胎児の脳を移植された美女」が、世界を旅して成長していくお話。それにともなって彼女を「女性版フランケンシュタイン」にしたマッドサイエンティストやその仲間たちも改心したり、しないせいであんなことになっちゃったり。

 監督は「ロブスター」「聖なる鹿殺し」のヨルゴス・ランティモス。こういう「世にも不思議な物語」系の才能は好き嫌いはともかく出来るだけ押さえときたいし、見るからにスチームパンクなSF大作だしで劇場いったけど、ちゃんと世界中で100億越えの大ヒット飛ばすとは思ってなかった。

 「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーン主演で時代はme too以降おおきく変わったとは言え、凝りに凝ったアート映画やからねえ。エラいことです。

          ……軽くネタバレ……

 当世流行しているメッセージやらお題目をきかされた感じはあって「おじさんの考えた『さいきょうにカッコいいフェミニズムえいが』でしょ~?」みたいな批判も的外れでは無いのだろうが、主人公ベラに付きまとうオラオラ系サイコ軍人の脳みそをアレしちゃうラストは思わずニッコリだしベラとマックスがゴドウィン博士を看取る場面は泣けた。

 アラスター・グレイによる原作では上記の顛末をマックスの手記としてつづり、しかしそこに「ネタバレコメント欄」として終わるらしい。

 アッチもコッチもどうにもならない・人間の性、悪なり!という「ヨーロッパの黄昏」的どん詰まり世界観としては原作の方が徹底してるのかも知らんけど、映画版も一応その匂いは残してるし映画・原作ともに観てる人でも別物じゃんと怒ってる意見あんま聞かない印象だが、どうなんでしょうか。後味が良いのは映画版ですね。

 (追記 24年3月11日)

 多様性の流れもあって今年は先住民のルーツをもつリリー・グラッドストンがアカデミー主演女優賞と予想されていたが、こちらだった。

 投票制のアカデミー賞はハリウッド近郊に住む同業者が動きで決まるそうだが、そうなると演技賞は役者たちの「あの役やってみたい」との気持ちで票が動くはず→演技的に大人しめの「キラーズオブフラワームーン」とその主演女優リリー・グラッドストンは監督がスコセッシとはいえ弱いかな~と思ってたらこうなった。まあ内部事情は分からないので個人的な当てずっぽうだが。

 受賞の瞬間はエマ自身が一番驚いてるようで、普通に獲れると思ってなかったらしい。感動しながらスピーチする様がなんかエロ可愛くて、旦那さんが羨ましくなるくらいだった。ちくしょうオレは今年で39のバキバキDTなんだぞこのヤロウ。
延々と歩く

延々と歩く