3時間26分の暗黒西部劇。石油利権をねらって先住民たちを闇に葬りまくる極悪白人どもの実話。監督はアメリカ映画界の巨匠、マーティン・スコセッシ。
3時間半があっという間…とまでは言わないけれど、苦痛なく観れたのは素直にすごいと思う。劇場では隣に年配の方が座っていたのだが、お互いトイレにも立たず最後まで鑑賞した。退屈なら行きたくなるとかそういうもので無いけどさ。
まあ老年に至った巨匠の「集大成」をどう受け取るか、みたいなポイントはそれなりの映画ファンなら感じることだが。日本なら最近の宮崎駿とか黒澤明の「影武者」「乱」とか。本作には「乱」っぽさを感じた。
整った美意識は持続するけど、「カジノ」からスコセッシを知った者からするとなんか綺麗すぎる気もする。まあ題材が昔のことすぎていわゆる「デニーロアプローチ」的な取材がきかない・どうしても演出や演技から雑味が抜けてクリアーになっちゃうのは仕方ないだろうけど。
オセージ族の女性たちが集まって、「どうせアイツら遺産目当てなんだろうけどさあ、こんなど田舎じゃ他に良い男いないじゃ~ん」とか話してる場面の井戸端会議な雰囲気はよかった。遠方からきた別の先住民と見せかけて実は…というFBI捜査官もよろしい。大して演技させてないのにちゃんと「出来るやつ」に見せてしまうのはベテラン監督の凄みだろう。
悲劇のヒロインを演じたリリー・グラッドストーンも良かったんだけど、上述のように大人しいっちゃ大人しい演技であり評価は高いのだが「オスカーの前哨戦」とされる賞レースでは「哀れなるものたち」のエマ・ストーンの方が目立っている印象。SAG(全米映画俳優組合賞)は獲っているし、アカデミーもギリギリいけそうな気はするが…。
(追記 24年3月11日)
アカデミー賞をリアルタイムで見たけど、あきまへんでしたな。主要部門はだいたい「哀れなるものたち」「オッペンハイマー」にもっていかれた。
女優賞に関しては繰り返しになるけど本作はみな演技おとなしめなんだよな~主役のディカプリオ以外。
監督のマーティン・スコセッシは長年コンビを組んでるロバート・デ・ニーロが「デニーロ・アプローチ」なる造語を生んでしまうくらい徹底した役作りをすることで有名だけど、あれって要するに体験取材みたいなことだから(「タクシードライバー」出演のためタクシー運転手になっちゃうとか)、取材するにも当事者がほぼ狼藉に入ってるくらい昔だと情報が無くてどうしてもディテールをはぶいた地味めの演技になる…のだろうか。