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哀れなるものたちのNのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
男の手によって創造された無知なベラ。その無知さを崇め、利用しようとする男達を知識欲と自由さで跳ね除ける。

バービーやスワロウなど昨今のフェミニズム映画は良いものが多いと個人的に思っています。哀れなるものたちも紛れもないフェミニズム映画だと思いますが、スワロウと同様”子を産む”という行為を重荷に描いてくれている。
スワロウを観た時も(この表現を描く映画が出てきた…!)と感嘆しましたが、今作も女性のセクシャリティから妊娠するという行為の重荷、そしてそれを実子が理解し自分とは違う人間の話だと受け入れる。という流れに感動しました。
ベラの母親が言えなかったであろう[新しい自分とクリトリスを大切にする]という台詞。もうこの一言に尽きると思った。妊娠出産しようがしまいが自分の身体を自由に、大切にできるということが前提になければならない。

ベラの無知さと好奇心にヒヤヒヤする場面もありましたが、彼女が誰にも邪魔させずに、それどころか出会う男たちから知識や経験を吸収し成長していく様に背中を押された。
最初故郷を去る時はおぼつかなかった足取りが、帰郷の際にはしっかりとした足取りになったのに気付き旅の終わりを感じました。

劇中娼婦館が出てきて思ったこと。最近Xで風俗業をしている人たちのポストが流れてくるんだけど、その中にホストで使うお金のために風俗をやっている人たちをちらほら見て、かなり落ち込んでしまう。(ネットなのであくまで表面的にしか見れてないことですが。)
見ず知らずのその人自身の人生なので私がとやかく言うことではないけれど、男のために自分の身体を消費しないでほしいと心の底から願います。
そして彼女達にリプライで「身体を売っているんだから嫌な目に遭うのはしょうがない」と送っている人たち。小学生でも分かる当たり前のことですが、どんな職業であろうと暴力を受けたり、嫌な目に遭うのが当たり前なんてことは1ミリもありません。身体を売っていようと嫌なことを嫌と言う権利は100%持っていいのです。それは男であっても女であっても誰でも。
しかしながらそういうリプライをしてくる人間はそもそも話が通じ無さそうなので、進歩させヤギになってもらうしかないのかもしれない。
この映画を見て最近のモヤモヤが言語化され、怒りが更に湧きました。
劇中、ベラの先進的な提案は実現されず沈黙と化したけれど、その中でも自分自身で変えられる事を見つけ実行したベラのようになりたい。

成長の物語だと母性ばかりがフィーチャーされる中、父性に重きを置いて描いているのも心地よかった。ベラを信じ、彼女を送り出すウィレムデフォーよ…

あと一回は劇場で観たいな〜、また追記するかも。
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