いずみたつや

哀れなるものたちのいずみたつやのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5
自由と平等を謳うベラを見ていると、自分がどれほど因習に縛られ、周りの空気をよむことに支配されているのかを思い知らされます。

生々しい性描写やギョッとする残酷な描写も、これらを「タブー」と受け取ってしまうことに対する違和感を突きつける巧妙な手段として機能しています。

誰もがなんとなく見過ごしたり受け入れたりしているものへの疑問を隠さず、自ら学んで決断していくベラの逞しさに惚れ惚れしました。

街の造形や美しい衣装、一風変わった音楽も印象的で、映画内のすべてが既存の観念にとらわれず、各々の個性を爆発させて主張しているのが素晴らしい。

その最前線で躍動するのがエマ・ストーン。演技の熱量だけでインパクトを残すのも十分に凄いことだと思いますが、彼女の今作でのパフォーマンスはそれだけに留まらない人間的な魅力と強さが表出していたように思います。

「善悪」に忠実であることを肯定するのではなく、知識と経験を渇望して行動し続けることを肯定するファンタジックでクレイジーでとても美しいおとぎ話でした。