きりん

哀れなるものたちのきりんのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
自ら命を絶った妊婦の女性が天才外科医によって胎児の脳を移植され、ベラ(エマ・ストーン)として蘇る。世界を見てみたいという欲望に駆られたベラは弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)と共に世界へと冒険の旅に出る話。


ヨルゴス・ランティモス監督の過去作と比べると随分とわかりやすく観れた印象。もちろんぶっ飛んでることに変わりはないけど🤪

独特なカメラワークとフレーム、極彩色、不協和音が画面に釘付けにされる✨また外科医が作り上げたであろうアヒル犬などの奇怪な生物はおとぎ話でも見ているようかのようだった。

ベラを生き返らせた外科医ゴッド(ウィレム・デフォー)の顔に刻まれた痛々しい傷跡は、まるで自身がモンスターであるかのようなフランケンシュタイン博士を彷彿してた。悲しい過去は胸が痛い。

生き返らせたベラを外界と遮断させ家の中で囲うのは『籠の中の乙女』も思い出させる。
また成長の仕方は違えど『悪い子バビー』とも共通するような話だった。

無垢で無邪気なベラをエマ・ストーンが怪演‼️
おせっせ描写は感情があまり感じられないヨルモス監督おなじみのやーつかと思いきや今回はそこにベラの“熱烈ジャンプ”という感情がプラスされてました。シュールではあるけど。さらに一石二鳥だと言わんばかりに後に職業にして社会の一部を体験。それによって自身のアイデンティティが確立され解放されていく。

身体は大人だが赤ちゃん脳のベラにとって体験することの全てが新鮮だし、忖度がない。だからこそ不味いものは吐き出すし、機嫌が悪いと当たり散らす。

心のおもむくままに“自由”

周りから見たらそれは奇行でしかないが、ベラは常にまっっすぐ!
常識に囚われ、支配しようとしたダンカンからしたら歯がゆいし、理解し難いのは仕方ないことだろう。だからこそ愛すべき存在へとなり得るのかもしれない。

男性優位な社会を嘲笑うかのように成長していくベラの姿に哀れなるものたちは滑稽でしかなく、クスリと笑えるようなラストは洒落が効いてて好み✨

赤ちゃんから大人へとベラの成長を体感するため自分の人生の141分を惜しみなく捧げるに値する作品だった。
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