乃朱

哀れなるものたちの乃朱のネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

美しい
素晴らしい

このふたことに限る

気持ち悪いもの観たさで観始めたのだが、一つの人生を、人体の脳という神秘的な宇宙そのものを垣間見たような映画だった。

いつか観た夢の中のような音楽
空色という常識に囚われぬ空の描かれ様はスジスワフベクシンスキーの絵画を彷彿とさせた。

設定こそダークで突飛なものの、この映画は
人生とは、己とは、意識とは、成長とは何かという難解な問の一つの答えを見せてくれる、そんな映画だった。

ゴッドの父性愛
マックスの抱擁力
ダンカンの欲望に塗れながらも人間臭く濃厚な愛
ハリーとマーサの愛の哲学
アレキサンドリアでの世界の真実との対峙
パリの娼婦宿での経験による自己意識の成熟、、
そして帰郷、真実…

これはベラの言う「冒険」そのものの映像化である。

子を見守る親のような気持ちでハラハラしながらも、世界の愛と時間の流れに身を当じ己を確立させてゆくベラのありのままをいつまでも観ていたいと思わされた。

そしてその成長のさなかに、人間の脳味噌のなんと神秘溢れるものかと感嘆した。

幼き脳はあれほど純粋に、真っ直ぐに物事を吸収するのだと。

また、幼き脳を持つベラには、偏見や悪意が見られなかった。
それは純粋さと言えるだろうが、ハリーやマーサに出会い哲学や現実主義に触れたことにより、その偏見への無知さは教養へと進化した。

性に触れるのが早すぎると思っていたが、熱烈ジャンプを仕事にすることに関しベラはなんの負い目も感じていなかった。
己に今何が必要なのか、なにをしたいのか、それによりどう進歩するのか。常に彼女は自身の成長のために物事を考えていた。他人の目を過剰に気にする描写が一つもなかったのである。

性に対する考え方が私自身と僅かに重なり、救われた。
「目的」、それにより得られる「経験」、「感情」、そして「結果」を考慮して行動することは、社会の目がどうであれ自身で決めることなのだと再認識した。

また何度でも観るでしょう。
将軍ヤギは作中一番笑いました。

Marvelous🫶🏿
乃朱

乃朱