街、海、自然、邸宅の内外、衣装の妖しく美しい色彩。控えめで神秘的だが日常に馴染み何かを示唆する音楽。嘲笑的だが冷静に周囲と自己を見つめるまなざし。常軌を逸した凄さを感じる一方で、全てがあまりにもあっさりと行き過ぎる。それがシニシズムとルサンチマンを超える静謐さにも感じられる。そもそもそういう判断の仕方を受けつけない映画か。よくも悪くも、2020年代という今現在の感性がこの作品を貫いているように思われた。
ベラは性を中心とした人間の根源的な欲望に対しては常軌を逸して開放的であり、基本として理知的な思考によって行動する。そんな彼女が唯一心を動揺させたものは? 彼女が報復によって葬ろうとしたものとは? 彼女は成長したらどうなる? 彼女を見て我々は何を受け取るのか? 整理がつかないことが正しいという微かな感覚が残る。それでいいのだと思う。このトーンを演じ切ったエマ・ストーンは素晴らしい。