子がいなくても男がいなくても平然と自立して自虐しない媚びない気後れしない女、いわゆる良妻賢母的ロールモデルを踏襲してきた側からすれば脅威そのものですよね。だからって、あんな火の玉ストレートで面と向かって体型を揶揄されることなんてある?と思ったし、全く動じず冷静に言われた分だけきっちり言い返してるのもすごいし、その後もふつうにご近所付き合い続いてるのが何より計り知れない。あけすけでさっぱりしつつも込み入った人間関係はお国柄…?と思うと俄然異国情緒が増幅されて、己が死を覗き見るような俯瞰も亡き者の亡霊?もすとんと腑に落ちてきた気がしました。
何があろうと慌てふためいたり取り乱したりしない、どっしり構えた年嵩の眼光鋭い女。これは確かにフィクションの世界じゃなかなかお目にかかれないタイプ、本邦においては映画化どころか書籍化の俎上にさえ載せられなさそうです。ジョージア女性を取り巻く社会の成熟度に思いを馳せたら、それだけでもうため息が出てきてしまったじゃないか…!
男たちの属性はごく僅かにしか明かされず、父や兄の死に様はおろか恋人の伴侶についてさえほぼ触れられないまま進んでいく物語の主役はどこまでも女たち。老いも若きも子持ちもティーンエイジャーも女性カップルもただ当たり前にそこにいて、川のせせらぎや谷の濁流や不穏な雷鳴を心情に寄せる演出が好みでした。結末を幾通りにも想像できるラストカットの表情、すごいな。彼女が使う年季の入ったセルフォンはどうかブラックベリーであってほしい…!
それからもひとつ、青髪ガールが青いヘッドホンで主人公に聴かせてあげる曲。イギリスのドリーム・ワイフにも似た怒れるバンドサウンドめちゃいいわ〜とぐぐってみたらそのものずばりなお名前がサジェストされました。スウェーデンのコラボレーションプロジェクトの曲なんですって!へええ。
I Eat Boys Like You For Breakfast - Riot Grrrl Sessions
https://open.spotify.com/track/2Rfc379pMcOGNtvYuq0pFO?si=Ke-xIIsaT0m_4lBG7T0X6Q&context=spotify%3Aartist%3A4h2NYIQwvncw9Hl8M0JLNi