almosteveryday

敵のalmosteverydayのレビュー・感想・評価

(2025年製作の映画)
3.5
いかにも和ホラー然としたフライヤーに恐れをなして遠ざけていたのだけれど、予告編があまりにも美しいので勇気を出して観に行きました。怖さとはまたちょっと違った意味で目が離せない、スクリーンの奥の奥まで覗き込んでいるような気持ちにさせられるめずらしい作風だなという印象。

序盤の静かで秩序ある満ち足りた暮らしぶりはわたしごとき凡人からすると理想あるいは憧れそのものなんですけど、仏文学の権威という偉大な肩書には甚だ物足りないのですよね、きっと。消えた女に騙された?のくだりから疑心暗鬼に陥る過程で妻にもかつての教え子にも責められる、ってことは何かしらの未練や後悔や後ろめたさを持て余してるのだろうなとか、涸れた井戸は生命力≠精力のメタファーよねえ、なんてことにぎゅんぎゅん想像を巡らせながら観てたら怖さやなんかはもう意識の外へすっ飛んでました。原作がどんなか読んでみたーい!って意欲をこんなにもかき立てられる映画はあまり記憶にないです。色も音も台詞も削ぎ落とされてるからか、スクリーンへの集中力がめちゃ高まってた気もする。

画に関して言うと長塚京三の存在感は言わずもがな、瀧内公美にしても黒沢あすかにしても河合優実にしても異様にモノクロ映えするというか、そこを基準にキャスティングしたのでは…?って気がしてくるほど抜群に魅力的でした。わざわざレバーを牛乳に浸して臭み抜きして串打ちまでして酒を嗜む(それも自分のためだけに!)高齢やもめ男性、いくらなんでもファンタジーが過ぎると思います。それからもひとつ、エンドロールで松尾諭と松尾貴史が横並び一列に流れてきて思わずふふっと笑いが出ました。さりげなくブラザー感出すなし!
almosteveryday

almosteveryday