butasu

パッチギ!のbutasuのレビュー・感想・評価

パッチギ!(2004年製作の映画)
3.0
強くたくましく生きる在日朝鮮人たちの苦悩と愛を描いた物語。群像劇だが、実質の主人公は塩谷瞬演じる日本人康介と高岡蒼甫演じる朝鮮人アンソンの二人。

まず高岡蒼甫の方の話だが、こちら側はとても好みだった。アンソンはいわゆる喧嘩番長なのだが、高岡蒼甫が圧倒的な佇まいとカリスマ性を見せており、喧嘩のシーンが始まるたびにワクワクした。子分たちや、他校のライバル、家族たちも個性豊かで、本当に観ていて楽しかった。真木よう子の姉御感は特に抜群で見事だった。

しかしもう一つのメインである康介が、残念ながら個人的に全く好きになれなかった。良い子ちゃん過ぎてイライラするというか、恋愛描写もモジモジしていて長く、物語全体のバイオレンス感に完全に水を差しているようにしか感じられなかった。オダギリジョー演じる意識高い系に簡単に影響されたり(オダジョーは完璧だった)、朝鮮人に肩入れするようになったら小出恵介演じる元の友達と全くつるまなくなったり、何だか調子こいてフワフワ流されているようにしか見えず、全く感情移入できなかった。

あと登場人物たちが語る戦争に対する意見とか、朝鮮人が語る日本人に対する恨みとか、この辺は完全スルーで観ないと突っ込みどころが多すぎてキツイと思う。監督の政治的見解が反映されたプロパガンダだと思わないとね。逆に言うと無知のままこの映画で変な知識を得ちゃう人が出ないことを祈るのみだが、当時は今と違ってこれが真実だと信じ込んだ人も多かったんだろうな。ただ、観る前に思っていたよりもその辺りの主張は控えめだったので、それはさておき単純な青春バイオレンス映画として十分楽しめる出来に仕上がっていたのは本当に良かった。

しかし、塩谷瞬、高岡蒼甫、小出恵介、沢尻エリカ…と色々と世間を騒がせた人がここまでメインで揃っている作品も凄いわ。
butasu

butasu