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貴公子のhasisiのレビュー・感想・評価

貴公子(2023年製作の映画)
3.6
フィリピン。
マルコは、地下格闘技場でボクサーとして働く若い男性。
パンチをもらいやすいので、試合後の顔はぼろぼろ。
少ない稼ぎで、病床にある母の面倒をみていた。
マルコは現地ではコピノの呼ばれる韓国人との混血だが、父の顔を知らない。
そんなある日。「父の使い」を名乗る連中が現れ、母の世話をしてくれる目途もつくのだが。

監督・脚本は、パク・フンジョン。
2023年に公開されたネオノワール・アクション・スリラー映画です。

【主な登場人物】🥭🌶️
[イサ]財団の理事。
[ウォルソク]イサの弁護士。
[ガヨン]女子高生。
[貴公子]?
[キム先生]院長。
[チャン]ガヨンの母。
[ハン]会長。
[マルコ]主人公。
[ユンジュ]女追跡者。

【概要から感想へ】🏥💊
パク監督は、1975年生まれ。韓国出身の男性。
ゲーム業界からの転身組で、2011年に長編監督デビュー。
アクションの専門家で、サブジャンルとして犯罪やホラーを得意としています。

彼の前作である『THE WITCH/魔女』と違って、成熟した男だらけで女っ気が乏しい。
超能力もなしなので期待薄。
序盤の引きが弱く、ぶっちゃけ、好きな監督じゃなければ離脱対象に。

[コピノ問題]🍹
コリアン+フィリピーノの合成語。
統計データーはないが、3万人ほど存在すると予想されている。
旅行や短期語学留学などで、フィリピンを訪れた際に、女性との間にできた子供を意味する。
自国に戻った後に妊娠が発覚する。
フィリピン人の多くがカトリック教徒で、堕胎は違法。
貧しい生活を送っている女性が、売春を行っている。

ちなみに、日本人との間に生まれた子はジャピーノ。フィリピン国内に約10万人いると言われている。

🥊〈序盤〉🛌🏻🏚️
巻き込まれ型アクション。
向こうからイベントがやってきて、主人公のマルコがどんどん状況に流されてゆく。
展開が予測不可能。

・韓国とフィリピンのハーフ、という映画では珍しい設定。
・父親は何者なのか?
・貴公子の存在が謎。通常だと追跡者なのだが、先導者であり、相棒でもある。

3つのミステリー要素が物語をけん引する。

🥊〈中盤〉🚗🚙
マルコが光で、貴公子が影。
過去作だと眠っている方の人格が、肉体を保有して2人に別れている。
定番の味。いつもの感覚が得られて、楽しい気分に。
全体のトーンは暗いのだが、
暴力を振るう人たちが笑顔だったり、逆に真顔で冗談を言うので怖い。
監督の明るさが、アクションに絡んで残酷な気分が味わえる。

ひたすら追跡者から逃げる。
動きのある絵を連続させて、2幕で飽きさせないように工夫されている。
『ジョン・ウィック』を彷彿させるアクション集だが、物語性が高く、銃や打撃の使用は必要最低限に。

🥊〈終盤〉🛌🏻🔫
マルコを載せたエスカレーターの行き着く先。
残酷な真相からの逆算。
懐かしくて、わたしが若い頃には時々見かけた物語。
SWやガンダム定番の近親憎悪を基に。
わたしとは同じ年の監督なのでネタ元が近く、あまり刺激はなかった。
最新の映画とは思えないほど古典的で、自分のルーツを大切にしている。

ガンカタ。
ひりひりさせるが、会話の時間が長い。
2幕が丸々スピード体験だったので、止まった絵がひどく遅く感じる。
それを溜めにして、
アクションを一気に放出。
磨きのかかった得意分野は圧巻。空間の広さと、物に衝突す痛みのバランスが絶妙。ここだけでも元が取れる。

【映画を振り返って】🏫🎒
現状、韓国アクションの中で一番好きな監督の新作。
拷問のような胸クソがなく、「虐めを扱ったダークなコント」として楽しめるので、サクッと逝ける。
映画への没入感の弱さがプラスに働いている好例だ。

ちょっと情報隠しすぎ。
「何が起こっているだ⁉」で引っ張りたい願望が込められた形式。
思考放棄したくなるほど、状況が理解できないので、視聴者は置いて行かれる。
場面もあちこちに飛んで断片的。コント集のような内容なので、ぐいぐい物語に引き込まれる、って感じではない。

[マルコ]🤕
のび太君。
主人公だが、感情は抑えて表に出さず、台詞もほとんどない。
子犬のように目で訴えてくる。
ポスターの扱いも酷く、Filmarks掲載分だと写ってすらいない。
サンドバック担当。

一応、ボクサー設定なんだけど、パンチを打っても脇が開いている。アクションやっても泣き顔で腰が引けているなど、いじめられっこ状態。
1幕の挫折ポイントなので、まじめにとらえず、ネタとしてやっているので気楽に。

[貴公子]😁
ジャイアン。
イケメンだけど、中身小父さん。
監督の分身。書いている人がナルシストなので、コメディのイケメンとは相性がいい。
虐め担当。
『ターミネーター』だとシュワちゃん。

テレビ版だと、のび太君を虐めるジャイアンも、劇場版だと頼りになるタフガイ。
韓国版きれいなジャイアンは、はたして天使か悪魔か。
必死に逃げまわるコピノ版のび太君の冒険を笑顔で追いかけてくる。
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