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座頭市兇状旅のodyssのレビュー・感想・評価

座頭市兇状旅(1963年製作の映画)
3.5
【おどける座頭市が哀しい】

勝新太郎主演による座頭市シリーズの第4作です。今回からタイトルの「物語」が取れて、「座頭市○○○」というタイトルでシリーズが続くことになります。監督は第3作に続いて田中徳三。

筋書き的には、前3作とのつながりは消えていません。第1作と第3作で登場したおたね(万里昌代)が再登場。今は腕はたつが粗暴な浪人の連れになっており、たまたま旅籠屋で市と再会するという設定です。市は、第1作でおたねから好意を寄せられたもののそれを断る形で別れ、第3作ではおたねは結婚間近ということになっていました。おたねは幸せになっているはず、と市は思っています。しかし再会したおたねは、人生には色々あると言って、必ずしも順調ではなかった自分の人生を暗示しますが、市は自分のまぶたの裏に残っているのは美しいおたねさんだと言って相手を励まそうとします。

ここで、DVDに収録されている予告編が面白い。予告編にあった場面が実際に本編を見ると消えているというケースはよくあるわけですけれど、本作でも、予告編ではおたね(万里昌代)が、この第4作のもう一人のヒロインであるおのぶ(高田美和)に、「あんたは私が無くしてしまったものをみんな持っている」と告げるシーンがあります。このシーンは最終的に本編からはカットされていますが、初々しい純情な娘という設定のおのぶと、人生の流転を経て昔好きだった市に再会し複雑な心情に陥らざるを得ないおたね。二人のヒロインの対比が実に鮮やかです。

ちなみにこの時の高田美和は映画デビューを果たした直後で、わずか16歳、万里昌代とちょうど10歳の違いです。万里昌代にしてもこのとき26歳だったわけで、人生の流浪の果ての女を表現するには少し早い気がしますが、むかしの女優は今より早くデビューして早く年をとっていったということなのでしょうか。

本作はそうした哀切極まりない人生模様が濃厚に出ている作品として見ごたえがあります。筋書き面では、おのぶに思いを寄せるヤクザの若親分がいて、しかしそのシマはおのぶの養父(おのぶは元はみなしごだった)が持っていたもので、若親分の先代が奪ったために、おのぶの養父はやむを得ず旅籠屋を経営しているという設定。そこから色々と事件が起こります。

最後には派手な斬り合いシーンと、おたねの連れとなった粗暴な浪人と市との一騎打ちシーンもあって満足できるのですが、ただ、敵方は斬り合いの前に鉄砲で陋屋内の座頭市を狙っているのに、座頭市が外に出て斬り合いになると鉄砲を使うシーンがない。これは少し問題ではないかと思いました。

暑い夏の盛りという季節設定。最初は旅をする市が汗をぬぐい、傘を日よけとして使うシーンから始まり、夏祭りの相撲に参加した市が目明きを次々と投げ飛ばす爽快な場面へと続きます。一方、最後は、おのぶなどに見送られた市が、おどけながら道を遠くに去っていくのですが、おたねの末路のあとではおどける座頭市が何とも哀しい。
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