みほみほ

6月0日 アイヒマンが処刑された日のみほみほのレビュー・感想・評価

3.5
🇮🇱2023年189本目🕍(字幕)41

登場人物へのスポットライトの当て方がチグハグな気もしたけど、アイヒマンの処刑から火葬に至るまでの舞台裏を様々な角度から見つめられる貴重な作品。

アイヒマンが何をしたとかナチの中でどんな地位だったかという事実よりも、イスラエルという国の体質や立場、当時の国内はどんな状況だったのかを体感出来るので、思っていた雰囲気とは違ったけど観れて良かったと私は思う。

シリアスな題材なはずなのにどこかコミカルで、思ったよりも軽やかな印象を受けたのは少年の存在が大きかったのは言うまでもないけど、登場人物のセリフの中にナチを嫌悪する思いが込められているのでどれだけの事をしたのかが自然と伝わってくる。直接描写はなくとも辛いセリフから悲惨な光景が想像できるので、油断していた時にぶち当たって思わず涙が出て、呼吸が乱れてくるシーンもありました。

基本的には火葬炉の建設がメインの物語ではあるが、そこに差し込んでくるそれぞれの物語が感情的で惹き込まれた分、うまく溶け込みあっていない感じがして不思議な後味でした。

でもこの映画のラストは 妙に好きだな。不思議な高揚感と希望に満ち溢れているというか…良かったねと声を掛けたくなるような。

題材としてのアイヒマンを期待すると あれ??となるかもしれませんが、アイヒマンが連行された最終地イスラエルでの裁判、そして処刑や火葬の裏側で誰がどんな事をしたのかを現地のリアルな質感で見れるので、ナチスというワードは忘れて観てみるのもいいかと思います。

刑務官の背景をもっと描いてくれるとさらに良かったんだけど、映画のメインがドカン!とあるので難しかったのかな、、

ゲットー(ユダヤ人強制移住区)は様々な映画にも出てくるけど、セリフだけで想像させる本作はその人の痛みをより深く知ることが出来るし、様々な声がある中で自分の経験を自分がどんな風に整理したいのか、なかなか考えさせられるものがあり胸が締め付けられました。

実際他のナチ関連映画を観た時も、収容所での出来事を戦後発信しても信じてもらえず口を閉ざした人、あまりの苦しみから封印して記憶を押し殺して生きる人が描かれていたので、本作でもそういう描写があったのは良かった。

見応えでいうと他のアイヒマンが題材になっている作品には見劣りする部分もあるけど、歴史的瞬間って当の本人達は目の前の出来事に追われて忙しなくその大きさに気付いてないことの方が多いので、それがまさにあの少年なんだとしたら感慨深いものがある。

少年の無邪気さを見ていたら、インド映画の「ピザ!」を思い出しました。

試写室にて。
(ユーロライブ)
みほみほ

みほみほ