Taiga

月のTaigaのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.0
相模原障碍者施設殺傷事件を下地に描かれた社会派問題作。
一人の青年が事件を起こすまでの経緯を、一人の女性の視点を通して追っていく。
人々の内側のドス黒いものを垣間見たようで、とてもグロテスク。

臭いものには蓋をしろ。
都合の悪いことは隠蔽して視界に入れない。
人々の届かない、耳に入らない叫びは元々無かったことと同じ。


まるで社会の縮図のような障碍者施設で働く青年が、徐々に壊れていき危険な思想へと導かれていく。

一方で、かつて障碍のある子供を亡くした経緯を持つ主人公の女性は、再び妊娠したものの、健常な子が産めないリスクの高い高齢出産であるために、産むことを決めあぐねていた。

障碍のある子はいらない…?
元々生まれてきてはいけない…?
彼らは、僕らは一体何の為に生まれてきた…?
意思疎通が難しい彼らには、心はあるの…?
彼らも僕らと同じ人間なの…?

まるで疑問に思うことすらタブーなようで、人々が避けてきたクエスチョンに対して真っ向糾弾しているこの映画はそれだけで価値がある。

どんな思想、どんな大義があろうとも、"人は人を殺めてはいけない"
生物学的意味ではない、人を人たらしめるものって、一体何なのだろうか。

優生思想と効率主義のロジックで殺人の意義を唱える犯人を、感情論的なことでしか抑えることができなかった様がやりきれない。
Taiga

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