kaorui

月のkaoruiのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.0
アーティストは描く対象に向き合いながら、自身の内側のエゴや欺瞞、人間の根源的な業と対峙し、自問自答しながら、作品を産み出す。まさに修羅の道である。
今作、監督の作家として修羅の道を行く覚悟がヒシヒシと伝わってきた。
早急で短絡的な解を出し行動してしまう若者に対して、自問自答し煩悶としながらも生命の尊さを信じ芸術家として再生していく夫婦の物語に僕は心を揺さぶられた。

施設につながる森の描写が不気味で、這いずる蛇や蚯蚓にフォーカスする。
施設の廊下をローキーで撮影し、まるで建物全体が生き物のように描写し、ふと空にパンすると不気味に三日月が光る。斜めになる画面や不可解なズームなど、いつになくケレン味たっぷりの演出は磯村君の心象風景につながる。
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