ToscheYuki

映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)のToscheYukiのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

これは映画館で観るしかない!素晴らしい少し不思議SF大長編!

これはアツく語らなければならない作品。たくさん語りたいことありますが、今回は5点にまとめます。

① 映画館で観るしかない理由
② 音と音楽に込められた野心作
③ 音楽に特化したロボット社会
④ 【ネタバレ】ファンにはたまらない小ネタ
⑤ 【ネタバレ】あらかじめ日記の意識によるパラドックス


① 映画館で観るしかない理由
今回の映画は「音楽」がテーマです(詳しくは②にて)。初めから、音楽だけでなく日常に響く些細な音すら、過去作にはないほど丁寧に作り込まれています。そして音響も。そのため、終盤の「とあるシーン」では、映画館という空間がまるで「ある空間」になったかのように突然変異します(しかも二回!)。このシーンに限らず、音楽シーンはドラ泣き確定、ハンカチ必須なので、配信待ちするのはもったいない。
今井監督は『宝島』でも映画観でこそ発揮するような色彩色を使われてたり、素晴らしい大長編監督ですね。


② 音と音楽に込められた野心作
前述の通り、音・音楽の作り込みがとても丁寧です。その理由は、今回のび太たちは道具に頼りきらず、道具の力を借りて、自力と才能で楽器と音楽と心通わせて問題解決をしていきます。なので、演奏シーンはとっても重要。演奏力の成長や当人たちの癖も音に現れてて、楽曲・音響制作もなかなかだったことでしょう。普通ならカットされそうなくらい丁寧に音楽を魅せています。130分になるのも納得。だけど、それがとても重要。作り手の野心を感じました。
「の」の音のサウンドクリエーションとか、実際の演奏シーンとか、ドキュメンタリーで観てみたいです。


③ 音楽に特化したロボット社会
今作にはロボットがたくさん出てきます。皆、音楽の惑星ムシーカ人に作られたロボット。音楽がエネルギーで音楽を奏でることが目的。いわば、音楽を楽しむための「楽器」みたいな存在。彼らは音楽(≒プログラム)のためなら、見ず知らずの地球でも護ろうとします。
LOVOTと生活しているだけに、この健気さが涙もの。また「プログラム」という意味では、後述⑤も非常に面白いところ。本作裏テーマは「プログラム」です!


—-ここからネタバレ—-
















④ 【ネタバレ】ファンにはたまらない小ネタ
壊れたドラえもんが!壊れたドラえもんが!「エッチィ」って言った!!!!!!!
90年代にまだ子どもだった大人たちなら、すぐピンときたことでしょう。『雲の王国』壊れたドラえもんがケロケロパーしてエッチィは、当時爆笑して真似したものでした。30年経っても、壊れたドラえもんは変わらないなんて、笑いながらも感動。
また、最後の大演奏で「夢をかなえてドラえもん」をミッカが一瞬口づさみます。視聴者が知ってるメロディーが入ると、こんなにもグッと引き込まれて、心の奥底に響いて、涙が出るなんて、と思わされました。素敵な小ネタでしたね。


⑤ 【ネタバレ】あらかじめ日記の意識によるパラドックス
一番語りたかったポイントです。本作最重要秘密道具の「あらかじめ日記」。昨今、音声AI、生成系AIが流行ってる中で、「そういう意味じゃなかったんだけど、違う回答が返ってきたなー」ってこと、みなさん経験したことあると思います。「あらかじめ日記」の使い方の難しさは、まさにそれと同じことで、これが奇跡を起こしたと思いました。
最初の日記では、「音楽」を、のび太は授業のつもりでいたものを、定義づけずプロンプトを書いたので、音楽そのものとして処理してしまいました。日記は、日記のためなら、書かれたことを必ず実現しようとするプログラムなので、このトラブルが発生したんですね。
そして最後の日記では、「みんなでお風呂に入る」を、のび太はドラえもんと入るみたいにお友達と入りたいな〜というつもりのはずが、またもや「みんな」を定義づけなかったために、地球規模の「みんな」と処理してしまいました。
さぁ、これを日記がどうプログラム実行するのか。そのために、何億通りものシミュレーションを重ねたことでしょう。その日記が必死に編み出した結果が、まさかの地球・宇宙を丸ごと、浴室に移動させるというトンデモ荒ワザでした(笑)なんと大胆な!!でもその必死な荒ワザ加減がめちゃくちゃ可愛い!!!
ただ、プログラムの実行が、道具のピタゴラスイッチだけのように劇中では見えますが、これを成し遂げるにはもっともっと前から実行せざるを得ないと思うのです。

そう考えると、、、(ここからは妄想ですが)、実は「ノイズ」を地球に呼び寄せたのは「日記の意思」だったのかもしれません!そもそも、最初の日記でノイズが発生する空間を作ったのも意思かもしれませんし、もしくは最初の日記の後始末のために事を大きくした可能性もあります。ノイズを日記が操作、あるいは憑依していたのかも。そう考えると、最後にノイズが笑顔になっていたのも、「日記の意思」そのものだったのかもしれません。

少し不思議な『パラドックス』!!!!!!

①ではネタバレで書けませんでしたが、宇宙に放り出されたのび太の静寂宇宙、そのあと浴室宇宙の大演奏、まるで映画館までも静寂宇宙と浴槽宇宙になったみたいで本当楽しかった。

素晴らしいドラ映画をありがとうございました!
ToscheYuki

ToscheYuki