しょうた

ほかげのしょうたのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
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戦争は、戦争が終わって終わりにはならず、それを体験した者の心の中で戦争は続いている。その意味でこの映画は「野火」の続篇だろう。そう思って観ていたら男(森山未來)が叫ぶ。やっと戦争が終わった。
その時、男が天に突き上げる自らの手。その手は冒頭の女(趣里)のカウンターに乗せた手に重なる。一つ一つの言葉も強いが、身体性で渦巻く心のうちを語る映画とも言える。
殊に少年は語らない。最後、女の言葉に従って無言で真面目に働こうとする姿の健気。
その少年のセリフ、「強く(冷酷に)なれなかった兵隊は帰れなかった」(正確ではないが)は戦争の本質を言い当てているだろう。
そして、女を気づかいながら少年は消える。その行方をどう想像するか。それは戦争後のこの社会がどうあり得たか、あり得なかったかを想うことのような気がする。
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