岩嵜修平

市子の岩嵜修平のレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.7
なるほど杉咲花が凄い。杉咲花はいつも凄いけど、これまた凄い。話としては、既視感がある内容ではあるが、市子というキャラクターの設定があまりに具体的で、杉咲花の演技力も相まって、実在感が増している。決して話運びも撮影も上手い作品では無いと思うが、訴えかけるモノの強さを感じた。

ただ、杉咲花については、個人的に『湯を沸かすほどの熱い愛』におけるトラウマ的な描写もあったりしたので、本作におけるいくつかの描写もしんどかった。とは言え、長らく子役として活躍してきた彼女が『おちょやん』『恋です!』『プリズム』を経て、イメージを完全に払拭したのは本当に素晴らしい。

パンフレット掲載の「市子」年表が本当に具体的で、観終わった後に読んでから理解できた背景も多くあったのだが、もう少し時系列を説明的でなく分かりやすく出来ないかとは思ってしまった。あと、終盤のニュースは、やはりあの2人が死んだのだよな…と考えると、市子に同情的に描くのもどうかと思う。

戸田彬弘監督、過去作は『名前』『散歩時間』と観てきたが、今ひとつピンと来なかったので、監督自身が仰る通り、分岐点になる作品(ヒットもしてるようだし)ではあると思うが、2015年に作った大ネタ(それが旗揚げ公演というのは凄い)が原作とのことで、監督としての評価は次作以降になるかと。
岩嵜修平

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