jami

市子のjamiのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

連続ドラマで例えると、「次週、最終話」というテロップが出てもおかしくないような、
そんな結末。いや、起承転結の結がないのだから、結末のない物語と言える。
『家族を思うとき』(2019)と同じで、意図的に結末を描かないことで、社会派としての風格を表現する、的な。それがわかるので、「えー!」と思ってしまうが、「なるほど。。」となる。凄い終わり方。
結末を描くとつまらない、というのも勿論ある。崖から落ちた男女のニュースが、全く無関係のニュースだとすると、強引なハッピーエンドもなくはない(自殺志願者とストーカー男が崖から落ちる経緯がリアルに想像できない。市子とストーカー男が落ちたとも思えない)一方、超えてはならない一線を超えたのなら、彼女の中にはもう狂気しかないことになり、あとは「壊れた人間、ないしは前科者を支える(? 一方通行的に想い続ける?)男の一生」が続いていく。自宅介護のように、終わりのない前途だ。非現実的と言える。つまり、彼は彼女を必ず見捨てる。面会に行かなくなる(いや、既に彼の「夏」は終わったのだ。弱りきったセミが象徴か。一方で、市子は妹を殺したあの夏の中にまだいる。妹が彼女を離さない。ホラー!)。そういう虚無的な未来も想像できる。また、複数の殺人罪で起訴された女にフラッシュがたかれ、彼女の悲劇は、週刊誌の記事として消費される。彼女はこうして無となる。社会の歪みは忘却される。嗚呼、日本。

演技は全体的に良くなかったけど、市子は杉咲花しかいない、と感じたし、それに負けず劣らずの恋人役が、凄い仕事してた。刑事役も結構良かった。電話を受けるシーンが。
脚本と演出が説明的なのも良くなかった。主演の実力に支えられただけの社会派メッセージ系映画だったと思う。冗長だし、意図的だと思うけど全体的に気持ち悪い。キスシーンとか特に。
jami

jami