れもん

市子のれもんのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.5
姿を消した恋人が何者だったのかを追うという『ある男』を彷彿とさせるプロットに興味を惹かれ、映画館で観たかったがタイミングが合わなかった作品。
主人公の市子を演じた杉咲花の純粋にも不純にも見える表情も良かったし、若葉竜也のリアル恋人感、森永悠希のこじらせ童貞感、中村ゆりのあばずれ母親感など、全体的にキャスティングはハマっていた。

好きな男には自分の汚い部分や情けない部分は見せられず、好きじゃない男にならどんな部分だって見せられる。
そうすると好きじゃない男が「自分は全てを見せられるほど信頼されている」「全てを見てきた自分だけがお前を救える」と調子に乗りはじめる。
そういう男にとって価値があるのは「自分を頼ってくる程度に困っている女」「自分が救える程度に不幸な女」なので、女が勝手に自立したり幸福になったりしないように足を引っ張ってくるのだ。
市子レベルではなくとも日本中の女が一度は経験していそうな現象だ。

以下ネタバレ有。







調子に乗った男はしっかり殺す市子が賢くて笑えた。
「自分をヒーローにしてくれないならお前は悪魔だ」みたいな思考回路の男は殺して正解。
殺さなければいつまでも「自分がヒーローになるための生贄」として扱われるから。

そして好きな男との思い出を回想する市子は切なくて泣けた。
月子として生きてきて冬子として生きていく、その合間に市子として生きられた短い時間のほとんどが彼との幸せな時間で占められていて、きっと彼なら汚い部分も情けない部分も受け入れてくれただろうけど、それを期待して叶わなかった時のことを考えると逃げるしかなかったのだろうと思うと…

ちなみに関西弁ネイティブ的に一番関西弁が自然だったのは中村ゆり。
コテコテすぎないのが良かった。

↓『ある男』
https://filmarks.com/movies/98833/reviews/147131990

【2024.03.10.鑑賞】
【2024.03.13.レビュー投稿】
【2024.03.15.レビュー最終編集】
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