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市子のaizvvのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.6
杉咲花と若葉竜也をずっと見ていたい。
見ていたかった映画だった。
演技だけでつけるならこんなもんでは無いけど、ストーリーと演出が冗長で、登場人物の心理描写も俳優頼りな感じがしたので。

評判聞いてて、杉咲花への絶対的信頼があって見るつもりだったけど、アンメットを3話まで見ていて初めてしっかりと若葉竜也の芝居を認識したから、(前々から映画界隈での評判は知っていて見たい作品もいくつかあったけどまだ未視聴だった)今すぐに見たくなって鑑賞した。

杉咲花は20代女優の中で圧倒的だと思う。芝居のうまさも本人の魅力も。
というか、安藤サクラを抜きにしたら20代に限らずともだと思う。
本当に生きてきた彼女の人生が見えるようで。芝居に見えなくて。
神経が太くならざるを得なかった彼女の環境と、それでも拭えない苦しさと、ただ1人の人間として好きな人と平凡に幸せに生きていきたかった市子の姿が杉咲花以外では想像出来ない。

よくある映画の悲惨な過去をもった女性の可哀想な苦しい人生が描かれた話じゃなくて、そんな綺麗にまとめられた話ではなくて、彼女がどんな風に生きてきて生きているかを見る様な映画だった。

ただ暗く何かに絶望している様を短絡的に表しているのではなく、しっかり絶望すらしないままただ淡々と日々を過ごすことで精神を保っている様な、そんな杉咲花の芝居が嘘に見えなくて。
長谷川からのプロポーズに泣く所も、高校の彼氏に触らせようとするシーンも、役所の男?にやらせたり、殺すシーンも本当を見ている様だった。

杉咲花も若葉竜也も本当に泣いてた。ボロボロボロボロ涙を溢して。顔だけ歪ませてポロっとじゃないんだもん。

若葉竜也の芝居は何が違うんだろう?どうして一見あんなに低い温度のように見えて、内々の熱さが伝わってくるんだろう。
淡々としている訳でもなく。
ただ表面上の熱さで誤魔化していないのに長谷川の市子への思いが伝わる。
目なのか、表情なのか、トーンなのか。
とてつもなく芝居が上手いと思うのに何が凄いのか分からないまま、惹き込まれる。
それが分からないのがまたいい。
派手じゃなくて、でも飽きないつまらなくないむしろ物凄く惹き付けられる芝居。


ストーリーの流れは正直途中ちょっと飽きた。過去と現在行ったり来たりは平気だけど毎回日付が出されるのがノイズに感じて好みじゃ無かった。疲れる。出ると気になって多少計算してしまって今いついつでさっきはいつでって考えるのが。演出的に必要だったのだろうけれども。
「ある男」と比べても飽きると言うか疲れるというか、好みじゃなかっただけかもしれないけど。
でもこの彼女の生い立ちは、とてつもなく厳しかった。
長谷川はどうするんだろう。二度と会えないような気がする。家を出てから市子の長谷川への描写が一切無かった。
それが市子の生きて行く術なのかな。


最後数分の2人のこれまでの暮らしの描写だけボロボロ泣いてしまった。あれがもっともっと見たかったのに。もっと見れると思ってたけど意外と少なかった。若葉竜也と杉咲花だったら、日々の暮らしだけで延々と見られるのに。
ナレーションもしっかり聞く余裕も無いほどに2人の暮らしだけで釘付けになって泣いてしまった。続けば良かったのに。続いて欲しかった。
市子はどこに行くの。どうやってまた生きて行くの。また1人で
長谷川はどうするの。いつまで追い続けるの?
正論なんて何の役にも立たない事が多々あるね。

2024.04.30 Amazon prime


この2人なら他の作品の影響なんて全く関係ないから、観てる方に思い浮かばせる事もなく目の前の役を見られるから、今後もたくさん共演作が見たいです。
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