えり

彼方のうたのえりのレビュー・感想・評価

彼方のうた(2023年製作の映画)
4.0
彼方のうたは詩だった、それも高度に圧縮された詩
詩は、作者の頭の中の世界を、限られた字数で表現する芸術
この映画は、限られた映像と言葉でそれを表そうしたもの
だから観る人をとても選ぶ映画、それに挑戦されたことが素晴らしかった

最初から春さんの明るさが不自然で引っかかって、時々イライラしたりもした
こんなに人間を観察できる人が、こんなに明るいわけがないと思ったから
物語の最後の方、道路脇で佇む春さんのシーンで、違和感の正体をやっと見れてホッとした
彼女も自分を見つけて欲しかったんだと
彼女は音を探していた、大切な人の記憶は、まず声から消えると聞いたことがある
彼女はきっと大切な音を取り返そうとしていた
映像も素晴らしかったです
光の差し方が心情を表していて
最初は曇りばかりだった空が、最後にかけて晴れ間が増えていって

こんな作品が世の中にあって、よかったです
えり

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