えり

Hereのえりのレビュー・感想・評価

Here(2023年製作の映画)
3.9
大人になって自由になった、世界が広がった。たくさんの人と関わって、経験を積んで。
それは素晴らしいことだけれど、同時に何かがすり減っていく感覚もある。
子供の頃の、狭いけれど充実した世界。
そこでは自分が主人公で、実際に身体を使って感じて、いつも新しい発見の連続だった。
今の時代は、現実だけでなくネットでもたくさんの人と繋がることができる。
人と繋がるのは素晴らしい。
けれど、人との繋がりにはどうしてもストレスが付き纏う。寧ろ、人との間でしかストレスは発生しないんじゃないか。
どこにいっても人がいる、というのは本当に幸せなんだろうか?
街という刺激だらけの空間で疲れた心は休まるのだろうか?
自然を見てイライラする人がいるのだろうか?
そう問われているような映画だった。
主人公の抑鬱状態のような前半シーンはやや長めかなと思いましたが、森でのシーン、前半の重苦しさはこのためにあったのかと思うくらい素敵でした。
一言で言うと森林浴のような映画です。
監督は、観ている全ての人に失った感覚を取り戻して欲しかったのではないかな。
えり

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