えり

ゴースト・トロピックのえりのレビュー・感想・評価

ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)
4.1
私にとっては、冒頭のシーンの衝撃だけで見て良かったと感じた。
自分が本当にこの部屋にいる感覚になる尺の長さや時間経過の映像、映画でこの感覚がしたのは初めてだった。
Hereも見たけれど、こちらの作品の方が監督の凄みを感じた。時々入るカメラワークの素晴らしさ、圧巻。
電車で寝てしまう時、音が消えるのもとても良い。現代アートのような光だけの映像も。

私は心が草臥れた時、よく夜の散歩をする。帰れないかも、という焦燥感は無いけれど。
夜の街を一人で歩く高揚感、少しの怖さと心細さ、映像からそういうものがしっかり感じ取れた。
丑の刻、丑三つ時、夜の不思議さは昔から日本の言葉でも残っている。普段見えないものが見える時間なのかも。
他者の意外な側面を見て、知らなかった娘の側面を見て、自分とは違う個について、主人公は考えずにはいられなかったのでは。
個人的にはもっと夜の徘徊のワクワクを長く楽しみたかったかな、という思いもありつつ、最後の終わり方をはっきりさせないラストも綺麗さがあって素晴らしいと思いました。
今後の作品も見ていきたい監督さんです。
えり

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