えり

かづゑ的のえりのレビュー・感想・評価

かづゑ的(2023年製作の映画)
5.0
1人の、私たちと同じ1人の人間が、その命の全てを使って、人間として生きて死ぬことはどういうことか、答えの出ない問いを必死に解こうとしていた。
きっとどんな学問よりも難しいことを、そうと分かった上で解こうと、そして次の世代に伝えようとしていた。
綺麗じゃないところも見せないと本物じゃない。本物を伝えたい。
らいは天から授かったもの。
この考えに至るまでの葛藤を考えると涙が出る。同時に簡単に泣いてしまう自分を情けなくも思う。
聖人君子なんて存在しない。
そうなりたい、そうでありたいという人の意志の強さ、風前の灯火を、この方はずっと、どんなに強い風に吹かれても守ってきたんだ。
正直私なんかがコメントする事が出来ない領域なのだけれど。
ただただ、たくさんの人に観てほしい。
今健康で幸せな人も、そうでない人も、大切な人がいる人も、そうでない人も、志しがある人も、迷っている人も。
人生を変えるとか大掛かりな綺麗事は言わないけれど、1秒でも心に刺さるものがあるはずだと、絶対という言葉が嫌いな私でさえ思ってしまいます。

人間とは魅惑的な被造物である。そして、恥辱や弱さをプライドや信仰に転化する、打ちひしがれた魂の錬金術ほど魅惑的なものはない。

エリック・ホッファーのこの言葉の意味が、この映画を観た私なら少しは理解出来るのではないかと、自惚れてしまうのです。
えり

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