えり

ノスタルジアのえりのレビュー・感想・評価

ノスタルジア(1983年製作の映画)
4.7
映像に一縷の隙もなかった。
冒頭から最後まで、一つ一つの場面が全て名画のよう。人物の配置、光、構図が完璧に整えられていて美しい。
ここまで隙のない映像はどこか神経症的で、美しいけれど、痛みも感じる。
祖国を追われる、家族と離れる。
心の拠り所を失う孤独とはどんなものだろう。私には、この部分を軽く語る事は出来ない。
モチーフとしての女性も印象的だった。聖母、妊婦、ヒステリー(昔の精神医学ではヒステリーは子宮の病とされてきた)など。
本当に、とても詩的で美しい映画だった。
詩自体、読み慣れない人から見ると、いきなり突拍子もなく思考が飛ぶように見えると思う。比喩表現も然り。
思考がどんどん飛ぶ映像は、まるで詩を創造する人間の頭の中を見ているようだった。
創造を映像化した稀有な映画。
創作のテーマとして、生きる事の希望と絶望は切っても切り離せない。
いつの時代の、どんな賢人も、悩み考え続けて答えなど出ないのだろうな。
考察する楽しみ、ただただ美しい映像を見る楽しみ、多様な見方が出来ると思います。
えり

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