じゅんふう

アキレスと亀のじゅんふうのネタバレレビュー・内容・結末

アキレスと亀(2008年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

何か創作物に打ち込んだ事がある人ならのめり込んで共感してしまうんではないかという作品で、ひたすらに寡黙な主人公のひたむきな姿勢とどうしようもない不器用さに重ね合わせてしまう箇所がいくつか。ちょっと過剰なユーモアと卑近なリアリティが混在していてコントのようにも悲痛な物語にも見える。
少年時代の転落での対応の違いも見ていて面白いけど青年時代の危なっかしげな創作活動が芸術感を歪ませていく様子も見ていて痛々しく面白い。
大体芸術学校この映画のような現代アート、コンテンポラリーアートと称して意味ありげで意味不明な活動してるだろうなという偏見まみれの勝手な想像が映像化されていた。(実際には違うんだろうですけど!)
危険な芸術活動を続けて事故があって、さらに方向性に思い悩みぶち当たり回りが自殺する中で奇抜に迷走していきながら方向性を歪ませていく。あまり日の目を見ない芸術活動にまみれた男の生涯を追い続けているとその迷走っぷりに悲しくなったりしたり面白く感じたりもする。
中年期になって迷走さは増してシャッターに落書きしたり事故現場をスケッチしたり迷惑かけてまで自分の芸術を追求し続ける姿は滑稽でありカッコ良くもある。
途中大森南朋さん演じる画商のアドバイスを愚直に受けて自らを生命の危機に晒していく夫婦2人。ボクシンググローブにインクつけて殴られたり水中に沈めて救急車沙汰になったり。ここらへんのテンポがほとんどコント。リアリティとコメディを混在させて割と失望的な物語を微笑ましく変えて表現していて凄く胸射たれる。娘が亡くなったときも口紅で塗りたくる狂気さもほとんどサイコパス、言うなれば芸術キチガイの所業なのにゾッとしない。生涯を追いかけているからか、やっぱりやりやがったこいつ!(嬉)という気分になる。
ゴールも答えもわからない芸術にひたむきに寡黙に打ち込む姿は愚かしくもあり可笑しくもあり、人生をかけて生涯を通じてのめり込んで創作できる欲望があるのは良いなあと思えるし、最後はやけどで包帯まみれになりながらも幸せには終わっていくし、報われなくてもこういう人生も羨ましいと憧れてしまう。
何か自分も創作に打ち込みたくなる。たとえ成功しなくても追い求めたい。
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