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ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディのn0701のネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

自分を素直に表現することが出来なくなってしまった人々。それはいつの日も変わらない。70年だろうが、現代だろうが、スマホがあろうとなかろうと、その形は変わらない。
この物語はある程度文明が発達した場合にある普遍的なことについて言っている。

つまり「世界は変わる、世界は捉え方だ」ということだ。

ある高校の寮で起こったクリスマス休暇での出来事。日本で言う冬休みの間、だいたい2週間あるクリスマスの間に起こった出来事。

ある歴史の教師は、目が出ており小太りで異臭のする独身男。彼はクリスマス休暇に寮から実家に戻れない子どもたちの相手をすることとなった。

子どもたちはクリスマス休暇に帰れない事情を抱える数人が取り残されていた。

詳細は端折るが、結果的に1人の歴史の成績が優秀な青年だけが両親と連絡が取れなかったため、1人を除いて全員が雪山にスキーをしに行くこととなる。

1人残された青年と、歴史の教師、そしてクリスマス休暇の間も変わらずに子どもたちに食事を作るため仕事をする女性、掃除夫。4人だけが学校に残ることとなる。

青年と教師、食事係りの3人はそれぞれ心に深い傷を抱え、それを表に見せることなく、人に嫌味をぶつけたり、わざと嫌われるようなことをする。まるでそうすることでしかアイデンティティを保てないかのように。

だが、それぞれが別の人物であり、別の隠れた物語がある。この物語ではそれぞれの心に潜む闇の部分が露呈し、咀嚼され、新たな価値観として定着する「成長の過程」がよく描かれている。

どれだけ嫌われている教師でも、人間らしい側面というのはあるのだ。特に、酒の前ではそれがよく現れる。

また、青年はそもそもその成長の過程にある。
彼は失敗し、失敗し続けることで微弱ながら進んでいく。

青年は若年性認知症と統合失調症を発症した父親と会うためボストンに行った。そこでクリスマスのスノードームをプレゼントし、物語は急変する。父親は自分の置かれた環境を理解できず、スノードームで入居者を殴りかかったのである。

その責任が青年にあるため、青年を退学させ、士官学校に入れるという義父。

しかし、教師は青年を庇い、クビになる。
むしろ、父親に会いに行くべきだと勧めたのは自分だと言ったためだ。

世界は不条理の連続だ。
暴力的で、理不尽で、無遠慮な世界。
教師は真実を青年に告げることなく、学校を去る。教師にとって、学校の教師は唯一無二の居場所であり、それ以外に生き方は存在しなかったのに、だ。

彼はいただきもののレミーマルタンを吐き捨て、車を運転する。行く当てなどあるのだろうか?
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