いつも「映画」より「音楽」が優位にあるジョン・カーニー作品、そのバランス感覚は『シング・ストリート』が頭抜けて良かったけれど、本作も音楽という夢の装置(ジョン・カーニーがあまりに音楽を好きなので、それが鳴りだせば幸せになってしまう)と現実の重力との乖離への目配せが以前よりはイヤミなく見れるようになってきてる。
マックスが両親と一緒に自分の作った曲を聴いた夜、または息子が彼女にアタックしてフラれたっぽい光景をアパートの窓から黙って見ているフローラ、イギリス映画的なミニマルな空気感の切り取り方が気取らずさらっと出て来る(アイルランド映画と呼びたいが)。
コロナ禍でモニター越しの交感を生身と等しく描くという試みと、それでもその距離がふと寂しくなる瞬間を美しい公園の引きの画で伝える粋さ。
そして前々からジョン・カーニーファンを公言してモダンラブにも参加した山田尚子の『きみの色』、あの最後のライブの捉え方が本作の影響下にあるのも明白に見て取れた。23年の映画の影響を24年の劇場用アニメに入れられるものなのだろうか、でも精神的なリンクが美しい。
AppleTV、自分のPCの問題なのか字幕にラグがあるので、吹替えの方がいいね。
完全に夢彼氏と化したジョセフ・ゴードン=レヴィットの歌も堪能できます。