naoyuki0917

悪は存在しないのnaoyuki0917のネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

いいものを観ることができた、と余韻に浸ることができる映画である。
濱口監督の映画は、どの作品にも、どこかそんなところがある。
Netflixの映画はきっとAIでも作れれるようにそのうちなるが(失礼)、濱口監督の映画は、きっとAIでは作ることのできない違和感や偶発的なもの、人間同士の会話の中で生まれる「何か」が含まれているのだと思う。これこそ、人間が作るべき映画ではないか?

自然を映すシーンでは、素材が良いだけではなく、とにかく撮り方の拘りを感じられ、映像と音楽の美しさが際立つ。
カメラワークにハッとするシーンがいくつもある。(主人公が歩いて、一度フレームアウトしてから娘を抱えて再登場するワンカットのシーン、鳥を写していてそこから急なパンで娘が散歩しているところを映すシーン、だるまさんがころんだのシーン、など)

濱口監督の映画に欠かせない、会話劇の独特のテンポ感はやはり健在で、大きくは2つくらいしか会話劇はなかったが、抑揚が抑えられながらも、それが返って感情を増幅させている。

物語としてのテーマは、何を優先するべきなのか、命のヒエラルキー、のようなものなのかなと感じた。特に最後のシーンは、主人公の命のヒエラルキーの考え方が表出したのではないだろうか。


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ただ、一つだけ思うのは、このように大自然の中に暮らしている人たちであったとしても、携帯は持っている、自動車は使っている、海外のブランドのアウターを着ている、というのも事実。それらは、大自然の中で人間が生きているだけでは決して生み出されない技術によるものたち。それらを見ずに、「うちはうち・よそはよそ」と言い、「自然はバランスだ」と言われても、そのバランスを保てているのは、大都市の技術力によって生み出されているものたちのいいとこ取りをして、それで、人高密度低く暮らしているから言えることなのではないだろうか。そういう意味で、僕は、田舎暮らしをすることが、必ずしも良いことだとは思えない。(この映画でもそれを肯定しているわけではないと思うが、都心部や経済活動に対する否定的な感情が生み出されているような気がするので)
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