木々を見上げるショット、割った薪を山小屋まで運んでいき薪を積んでから煙草に火を点ける長回し。これはケッサクを撮りにきてますな〜笑と開始5分でイヤな客になってしまったけど、ちゃんと傑作なんだから大したもんだ。
まず何に感動したって、大美賀均が最初に娘を迎えに行った帰り。保母さん(でいいのかな?)を捉えたカットがやたら車のドアの開閉等に合わせて振動するなと思ったら、カメラが大美賀均が乗る車のリアゲート辺りにくっついてて、そのまま移動する車の背中視点を映し続けるのね。その宙ぶらりん感がすごく不安を掻き立てられて怖いし、ちゃんと茂みの影の中に入っていくから余計不安になる。しかも、この「茂みの中に入っていく」ということが、クライマックス付近で、2回目の娘送迎の帰りに大美賀均に被さる影と呼応するから大したもんだ(チリチリ燃える煙草の火が赤く煌めくのが格好いい!)。こういう韻を踏むような、或いはマジカルバナナ的な発想でストーリーテリングしたり、客の感情を揺さぶったりしてくるから油断ならないし、圧倒的に正しい。
そんでこの大美賀均を覆う影のさりげなくも確かな不吉さは、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のヴィゴ・モーテンセンの前髪を揺らす風を超えていると思う。
中盤のクライマックスたるグランピング説明会のイヤな感じも大したもんだ。特に、うどん屋の女性が話し始めたときに小坂竜士が水を飲んでしまうところ、「俺だって言われてやってるだけなんだよ」「この人なら水飲んでいいや」感が出てて素晴らしかった。
小坂竜士につけられる演出はどれも良くて、渋谷采郁とのドライブ中に煙草吸っていいか聞いたら「いいけど窓開けます」と言われ、後に大美賀均と3人で車乗ってるときに大美賀均が煙草を吸い始めると窓を開けてやるのとかさりげない優しさがあってほっこりする。
そんでコンサルのイメージ悪すぎて笑った。