Kaz66

悪は存在しないのKaz66のレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.8
「偶然と想像」がベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)、「ドライブ・マイ・カー」がカンヌ国際映画祭で脚本賞とアカデミー賞で国際長編映画賞、そして本作「悪は存在しない」でヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)を受賞!と、日本人としては黒澤明以来初めて、米アカデミー賞と世界三大映画祭全てで受賞を果たした監督となった濱口竜介。
45才にして、日本で最も実績を積み、世界からも注目を集める監督になった濱口さん。
その作風は『映画とはエモーション』と言い、ストーリー(着地)も曖昧で多くを語らず、こうだと決めつけない様々な視座を丁寧に描くもの…。
でも、今作は僕にはちょっと難しかったと言うか、もうちょっとガイドが欲しかったです。
自然の脅威・暴力性は悪ではなく、そこに居る人間の営みも自然の一部だと考えるとそこにも“生まれながらの”悪もない…。都会のグランピング計画もその営みを存続するためと考えれば純粋な悪とも言えず、ましてやそこに関わる人たちも悪を為すためにやってるのでは無い…。
そんな色んな立場・視点からの営みを、美しい自然と絶妙な会話劇、エモーションの発露としての演技で描く。
そして“神の使い/山の神”の象徴としての鹿🦌とヒトの対峙とその後の必然の余韻…でこの映画は終わりを迎える。
なんとも示唆的かつ鑑賞者に解釈を委ねるエンディング…。そして僕は何とも言えない感情に揺さぶられて、僕の日常に戻るコトしか出来なかったのでした。
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