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悪は存在しないのlsloveu3のネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

「要するにバランスだ。」
と巧は言う。
バランスとは、誰にとっての?誰が決めたもの?

「キャンプファイヤーは禁止と言うが、深夜帯に管理人がいないのでは規制は不可能。20年に一度の山火事が5年に一度になる。」
「生活水は浄化すると言うが、浄化に限界があるのでは、生活水で水が汚れる。」

住民からの鋭い指摘に高橋は
「そもそも破綻している。」
とコンサルに本音を吐く。
そもそもとは、いったい、どこから?

村の事ならなんでも知ってる巧は、高橋達からアドバイザーとして村の助言を与える。

村の事を教える中、鹿の話になる。

「グランピング予定地は鹿の通り道だ。3mの柵が必要だ。そんな柵がある場所にキャンプに来ようと思うだろうか。」
「鹿は人を襲うのでしょうか。」
「まずあり得ない。鹿は人を見ると逃げる。怪我をして動けない場合や親鹿だったら威嚇するかもしれないが、でもあり得ない。」
「鹿が近づかないなら問題ないのではないでしょうか。」

説明会の時と、立場が逆転して、巧が高橋達に言い負かされている。

しばし沈黙があった後、巧は
「近づかなくなった鹿はどこにいく」
と質問する。高橋は
「それはどこか、別の場所へ...」
と答える。

鹿は、今の場所にいる以前はどこにいたのだろうか。
巧は開拓三世だ。
巧達の親やその親世代が周辺を開拓したことにより追い出されて、鹿の今の通り道ができたのではないだろうか。

『バランス』とは、村人の都合であり、鹿(=自然)から見たら現状は良いバランスなのだろうか。
『そもそも破綻している』とは、巧達の親やその親世代がこの周辺に移住し開拓し始めたころから『そもそも』ははじまっているのではないか。

生活水で自然を汚染しているのは『そもそも』誰だ。
5年に一度ではないが、20年に一度の山火事が『そもそも』起きている。

花が行方不明になる。
村の事ならなんでも知っているはずの巧の想定は見誤り、
『鹿が人を襲う』事態が起きる。
巧だって自然を全て理解してなどいないのだ。
銃撃され傷付いた鹿が、防衛本能から花を襲った。
この事件は『そもそも』ここに人が住み狩猟をしなければ起きなかった事件だ。

鹿は悪ではない。自然は悪ではない。そのはずなのに。
『そもそも』は悪は存在しなかったはずなのに。
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