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Ribbonのlsloveu3のレビュー・感想・評価

Ribbon(2021年製作の映画)
3.9
監督・主演・脚本・企画・編集 のん

いくらだって個性全開のアート映画も撮れただろうに、撮ったのはコロナ禍により表現ができない&不要となった世界。
「やりたいことをやりたいだけなのに世界がそうさせてくれない」という葛藤は自身を巡る芸能界の騒動とオーバーラップする。

「芸術にはとんでもない力があって、これさえあれば世界を変えることができる」などという、キツい映画にありがちな本来持ちえない魔法的な役割を作品内の芸術(歌とかにありがち)に持たせることもせず、大学生の自己表現の限界についても現実味があり、地に足がついている。

大学生活の集大成となる作品は、一人暮らしを始めてから4年間過ごしたアパートの一部屋の中でこそ完成されるのだという集約の仕方に生々しい説得力があり妙に納得させられた。のん氏は大学生活をした経験がないはずなのによくこの生々しさに辿り着いたなと感服した。

てか普通にすごくね。環境に恵まれているというアドバンテージはあるけどこれを自分で撮れるってすごい。
「環境に恵まれている」と書いたが、そんじょそこらの人間より一億倍は壮絶な人生だし、その環境を手に入れることだって一筋縄じゃいかない。

ひとつ言いたいことがあるとするならば、のん氏は無名な大学生ではないということ。
良くも悪くも、あなたの人生には価値がある。
なぜ「悪くも」なのかと言えば、その芸術作品が無名の大学生の物だとしたら目を向けられないが、作者がのん氏となればありがたがるからだ。
作品の価値とは。
しかしこのジレンマも抱えているからこそのん氏はこんな映画を撮ったんだろう。そんな客観視点も内包しているように思う。
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