ロアー

伯爵のロアーのレビュー・感想・評価

伯爵(2023年製作の映画)
3.7
一言でまとめてしまうと"吸血鬼おじいちゃんのお終活お家騒動ブラックコメディ(コメディ?)"映画なんだけど、時代としては現代の設定であるこの映画を「よくぞモノクロで作ってくれた!」と称賛したくなるほど画のセンスが良い。音楽も良い。
吸血鬼が主人公なので、往年のモンスター映画へのオマージュとしてのモノクロなのかな?カラーだったらかなり画面が赤くなりそうなグロ描写も、モノクロによって品のある洗練された映像になっていて非常に良きだった。あの人の飛行シーンは特に芸術点高い。

主に伯爵のお終活時代のお話なので、吸血鬼映画にしては(吸血鬼としての実年齢はともかく)見た目の年齢層が高めな映画だったけど、最初の方にちょっと出てくる若かりし頃の伯爵の所業にはお耽美さもあって良きだった。マリー・アントワネットが斬首されたギロチンの刃を伯爵が夢中で舐めてるシーンが好き。この頃の伯爵のお話も観てみたい。

ストーリーは結構ぶっ飛んでて、映像や会話にセンスがなかったら完全にZ級映画として爆死してた気もする。ラスボス(違)が出てきた時は思わず爆笑しちゃったし、この点に関しては確かにコメディと言って良い筈。ただ、作品に漂う雰囲気が決してZ級映画にはさせない異彩を放っていて、なんだかんだ魅力されて好きな雰囲気の映画だった。

実際、アウグスト・ピノチェトもラスボスも実在の人物で、もし彼らが吸血鬼だったら...?というシニカルな風刺を交えたある程度の教養も必要な作品なんだろうと思う。そうだと事前に知っていたら、歴史的背景をもっと知った上で観たかったな。流石にチリの元大統領なんて名前すら知らなかったよ(それとも知らないの私だけ?)。でも名前がかっちょいいのでこれで覚えました、アウグスト・ピノチェト。映画って勉強になる〜ぅ。
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