のんchan

人間の境界ののんchanのレビュー・感想・評価

人間の境界(2023年製作の映画)
4.2
ポーランド🇵🇱の巨匠アグニエシュカ・ホランド(75歳)は、アンジェイ・ワイダ監督に師事し、ワイダの脚本も手掛けている。
『赤い闇スターリンの冷たい大地で』は満点を付けたほどの傑作でした。
社会派で実力ある女性監督の新作に心して臨みました。

ポーランド政府が前代未聞で上映妨害をした《隠したがった真実》とは?
記録を禁じられた国境で何が起きているのかをドキュメンタリータッチで激撮している。

ポーランド政府は2021年9月、EU諸国への亡命を求める人々で溢れるベラルーシ🇧🇾との国境付近に緊急事態宣言を発令し、ベラルーシから移送される難民《人間兵器とよばれるベラルーシの策略》を受入拒否した上に強制的に送り返し、ジャーナリスト、医師、人道支援団体らの立ち入りも禁止した。
入国を拒絶された難民たちは立ち往生し、極寒の森を彷徨い、死の恐怖にさらされたのだった。


この作品はフィクションであるものの、ほぼ真実だと思って鑑賞した。
冒頭は飛行機の中、夫、妻は妊婦、長男、幼い長女、祖父のシリア人一家は「ベラルーシを経由しポーランド国境を渡れば、安全にヨーロッパへ入ることができる」という情報を信じて祖国を脱出した。
亡命を求め国境の森まで辿り着いたが、そこには武装した国境警備隊が待ち受けていて入れてもらえず返される。するとベラルーシ側の兵士はまた送り返すという、物を扱う以下の対応。境界線で生きるか死ぬかとなるのだった。

シリア人難民家族、支援活動家、国境警備隊の青年等の複数の視点で描いた群像劇となっていた。


日本から遠い国とは言え、近年の話だとはピンと来ない感じがしてしまった。それほどに過酷で目を覆うシーンがある。しかし、難民の子供がスマホを持ち操作出来るのを見て現代なのが信じ難く胸が締め付けられてしまう。
と同時に、スマホで位置情報を確認するシーンが多かったが、電池が切れたら頼るもの皆無。そこも現代人の盲点だとも感じた。

ただ、ポーランド側で難民を助けるべく無私で動く人々や組織、また官憲の側で非道の扱いに心を痛め、力になろうとする人も存在したのは若干でも救いが見えた。

自分に何が出来るわけでもないが、世の中で起きている国絡みの悪事は知っておくべきであり、ポーランドだけのことでない、狂っているとしか思えない国々のやる事にNOと言える強い心を持つこと。偏見を持たず、ちょっとした機転、助け合いで変わる世の中であるようにと。

日本は島国だから移民は...とか言える時代ではなくなっている。
今も難民を受け入れている現状がある。他人事ではないのだ。
モノクロの長尺だが、パートに分かれていて解り難くないし、しっかり訴えるものを感じ取った。
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