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DOGMAN ドッグマンの教授のレビュー・感想・評価

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)
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いわゆるジャンル映画としての良作。
面白かったし、泣いた。
現在、体調的に弱っているのもあるが、日々の悩みも投影してとにかく泣いてしまった。

ありがちな、軽妙さを売りにしたアクション映画かと思いきや、回想形式で語られるダグラス(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)の人生がそのまま物語の中心。
言い方が適切かはわからないが、父親からの暴力やネグレクト、その題材自体はもはや使い古されている感じもあり、辟易している点も否めない。
とはいえ、そこがリュック・ベッソンの演出力の手際とケイレブ・ランドリー・ジョーンズの物憂げで二ヒリスティックな演技の凄みで感動的に仕上げている。

エピソードとしても、サルマ(グレース・パルマ)への初恋の地獄。彼女から得た「芸は身を助ける」という知見と、一方で愛情の報われなさと生々しい性愛への受け止められなさとがないまぜになったダグラスの感情を表した演技力の高さが壮絶。
まさに「胸を掻きむしられる」という苦悩を文字通り表現していて「ベタ」を衒いもなくやるという思い切りの良さが効果を上げている。

終盤のギャングとの対決となるアクションシーンは正直、主役である犬たちが記号的にしか機能せず、壮絶な戦いと感じるには物語的にもアクション演出としても凡庸で残念な印象。

しかしまたラストシーンでの「I stand for you」という叫びはそのシャープさも含めて見事なエンディング。
決して緻密に作り込まれた上質な映画ではないが、気迫に満ちた、表現したいものに対しての純粋さが満ちていてリュック・ベッソンの枯れていない情熱に感心した。
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