このレビューはネタバレを含みます
かなり見応えがあった!今のところ今年の邦画No.1。冒頭から引き込まれる。父親のあの“事件”から全ては始まった。
前半 北風が吹きすさみとにかく寒そう。卓(たかし)の心象風景。
父親宅に着いたが、父 義母 息子 3人一緒にカメラには映らなかった。
父親からの暴言の謝罪。多分それは“不在”についての間接的な謝罪だった 父には罪の意識があり、卓の記事を密かに集めていた
病を患ってからの父の方が何故か親しみやすい。大学教授でも何でもない。子供みたいにヘンなことを言う無邪気なおじさん( 藤竜也の話し方のクセって言うか 昔の人ふうの喋り方がうますぎる!藤竜也劇場 )
息子を“タッくん”、卓も初めて“お父さん” と。
自分の心の大部分を占めてたはずの小理屈ばかりの父親が、普通に歳を取り認知症になる。
施設の職員にも刺々しく対応していた卓。桜が咲き 暖風に顔が綻ぶ。雪解け間近。
前半のサスペンス仕立てから一変し後半は父親夫婦の真実がより濃く描かれる。
夫と大恋愛のその後… 妻 直美の落胆。
お互いの家庭を捨ててまで一緒になったはずが 直美の妹に手を出そうとしたり、何かにつけて短気を起こしすぐ激昂したり。仕舞にはスーパーで直美が倒れた時 陽二が見てたのにその場から立ち去ったり。
長年連れ添った夫婦でも片方がこうなると辛いだろうが あの日記のような情熱のあった二人の方がよりキツいのかも知れない。
直美は妹の元に身を寄せたあと(あの日記を投げつけられた日のあと)時系列はハッキリしないが、自宅に戻り夫にもう一度会ったのだろう。直美が出かける時、陽二は直美の髪や頬を優しく撫でてくれた。
ゴチャついてた自宅が見違えるようにきれいに整えられた。
卓が電車から見た豊かな海辺
夕希の『きれいな海ねえ』
『直美ー!』陽二が叫ぶ
夕日を見つめる直美の穏やかな顔
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再婚夫婦のその後(老後)について描かれた邦画は初めてなんじゃなかろうか?
認知症、記憶、残してきた子供、陽二が偲ぶ会でチラリと言ってた人間の“大脳皮質”。
以前ならこの夫婦の恋愛パートこそが映画のテーマだったりしたが…
森山未來はこんな役がホントにうまい!
記憶… 家族や夫婦にとって大事なのは記憶の繋がりや共有、連続性なのかも知れない。
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近浦啓監督の作品は今回初めて観たが、いやあ素晴らしかった!
また新たな才能が現れた。何でも遅咲きの監督らしい。
テーマに興味ある方にお勧めします。