みむさん

ぼくは君たちを憎まないことにしたのみむさんのレビュー・感想・評価

3.5
2015年11月のパリのテロ、記憶に新しいのでやっぱり生々しさは感じる。
このテロにまつわる映画複数作られてるね。最近だと「パリの記憶」とか。

本作ではテロで妻を亡くした男性が苦悩しながらも踏ん切りをなんとかつけて幼い息子とともに生きていこうと立ち上がろうとする、まさに事件後二週間の様子が描かれる。

タイトルにある通り、憎しみや怒りを持たずに生きていこうとする話で。これは難しいことだと思う。
大切な人を亡くして悲しみはもちろん、なぜ彼女が?という理不尽さに対する憤りや、いとも簡単に大切な命を奪った犯人への憎しみを抑えることは相当難しい。

でも主人公のアントワーヌはその決意をする。
決意の理由がごもっともで。こういう考えを持てる人が世界中にいれば戦争などなくなるだろう。
怒って憎めば犯人と同じになってしまう、ずっと悲しんで怯えていたら犯人の思うツボ。まさに。

しかし誰もがそこまで強くなれる訳ではなく。アントワーヌも相当苦悩していた。苦悩するあまり周りが見えず配慮や思いやりまで気が回らない。負の感情にどう対処していくかわからず混乱する。
だから観る側の感情を揺さぶる。

ただ、差し入れのスープを捨てるシーンは入れなくてもよかった気がする。あれはちょっと驚いた。
あれ実際にあったのかな?スープ差し入れた人が気にしてなかったとしても、映画的にあんなドン引きシーン入れなくても…と思ってしまったよ。
聖人ではないし完璧な人間でもない、むしろ至らぬ点もあるということを包み隠さず描いたのかもしれない。

トータルでは良かった。アントワーヌに心動かされるが必要以上に湿っぽくなく涙を煽るような演出でもないのも好感。