rage30

ぼくは君たちを憎まないことにしたのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

テロで妻を失った男の話。

妻を失った主人公はテロリストに手紙を書くのですが、これが良かったですね。
確かに主人公が言う様に、テロによって怒りや憎しみを連鎖させてしまっては、テロリストの狙い通りになってしまいますし、憎しみに囚われない事がテロへの抵抗手段になるという事。
実際、この手紙は大反響を受けたそうですが、テロ被害者の家族だからこそ伝わる、説得力もあったのでしょう。

しかし、犯人を憎むのは止めたとはいえ、妻を失った悲しみが消えるわけでもなく、主人公の苦しみは続きます。
途中、妻の葬式に集中出来てない様子が描かれていましたが、おそらく家族の中で誰よりも妻の死と向き合えていなかったのが、主人公だったんじゃないかな。
だからこそ、彼は自分を奮い立たせる為に、あの手紙を書く必要があったのだろうし、メディアに出演する事で現実逃避をしていたのかもしれません。

まぁ、それでも最終的には妻の死を向き合うわけですが、特に事件が起こるわけでもないので、終盤の展開には少し物足りなさを感じました。
勿論、悲しみや喪失は日常の中で少しずつ癒されるものだとは思いますが、劇映画として見るからには、映画的な盛り上がりを用意しても良かった気がします。

憎しみの連鎖を断ちきるって、言葉で言うのは簡単だけど、実際に行動に移すのは難しいと思うし、言葉にして言ったからこそ、傷ついた人達に勇気を与えられたわけで。
そこが言葉ではなく、暴力で訴えるテロリストとの対比にもなっているし、ジャーナリストが言葉を武器にテロと戦う…という構図もグッと来る部分。
「ペンは剣より強し」とは、こういう事を言うのでしょう。
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