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52ヘルツのクジラたちのKのネタバレレビュー・内容・結末

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

初めは虐待をテーマにした映画だと思った。
52ヘルツのクジラとは広い海でどんだけ歌っても届くことのない世界一孤独なクジラと虐待され孤独で生きてる2人を重ね合わせたのだと思っていた。
DVやネグレクト、ヤングケアラーとあらゆる虐待をされながら暮らし身体中にある傷や喋れなくなったり、自殺しようとしたり十分心身ともに抱える傷が痛々しいのだが、観覧車で夜景を見ることやビールを飲むこと、焼肉を食べること、生きてる上で過半数が当たり前のように経験する事ができないこと。自分で選べず親の勝手でそういった環境に陥った姿。20歳を超えて焼肉が初めてな人がいると言う現実とそれを聞いて驚く人を見て僕らの視野を広げてくれる。そして考えさせてくれる。

岡田安吾と出会いからキコは人生の転換期を迎えることになる。
ただ初めはやり過ぎじゃないかと思うほど無償の優しさを与え続け幸せを願う姿と微妙な間に訳ありなんだろうという思いと違和感を感じた。というのも特徴的な髭と瞬きの多さが気になってしまった。

そして物語が展開していくにつれ明らかになる真実安吾がトランスジェンダーであること。ここにきてまた1つ題材が増えるのかと、虐待だけでも映画は成り立つだろうにこの重たい内容に複数のテーマの融合の映像化には凄いものが見れたと思うし本当の52ヘルツのクジラは岡田安吾であり声は届くことなく自殺してしまうも小さな幸せがあったことそして題名のクジラたちと複数形であること。抱えるものは違えど孤独であったもの達の出会いと孤独だったからこその無償の優しさにとても感動した。

安吾が亡くなり安吾の母と空港に行く前のシーンのキコの目元をアップにした無音は全体的な演技は素晴らしいがあのシーンは本当に素晴らしいと思う。他の映画では声ももうちょっと高いと思うけどトーンも落ちついていて初めこんな低かったっけって思うほど。

その後の遺言を新名に燃やされ包丁で腹を刺したシーンではセカチューの空港のシーンを思い出した。あの時の新名がキコに対して「逝くなー」といったセリフは嘘くさく感じた。

少年が髪を切ったところで広角していきテラスを中心に町全体を映し出しそこには他の家もあり1人じゃないと思わせてくれる画で映画を通して悲しい感情だけでもたくさんの種類があり常に異なる涙がでた。
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