映画の公式からトリガーアラートが出ていますので、心配な方は一度確認されることをお勧めします。
『市子』鑑賞から中1日。
主演が同じ杉咲花で物語のトーンも似ているような気がしたので観てみました。原作未読ながら観賞後読み始め。（読後のコメントは付記。読んでない人にはお勧めします！）
ロケーションが綺麗だし、貴湖（きこ きなこと呼ばれる事もあるこの話の主人公 演じるは杉咲花）が住む家やタワマンに高級レストラン………と綺麗なものが多い印象。〝貧困〟な環境ではないのがわかります。
それもあってか全体的に整った感じです。
それでも、あまりにも酷い人間が出てくるので〝胸糞が悪い〟印象が。そこは作品としては良いと思います。
だからこそ、
虐待、在宅医療、ヤングケアラー、トランスジェンダー………のお話なので当事者への配慮もしています。監修、インクルーシブディレクター、インティマシーコーディネーターと配置していますが、それでも、やはり見ていて辛い場面多いです。
主人公はあくまで貴湖ですが〝クジラたち〟と複数形でもあるように、52ヘルツの声を発していたのは彼女だけではありません。
貴湖を救い出した岡田安吾（志尊淳）も、貴湖が手を差し伸べた少年（映画初出演の桑名桃李）も同じクジラなわけです。
一人の人生にフォーカスした『市子』と違う所はそこです。
視点が三つに分散されるからか、
訴えかけるものが多いのか、全体的に薄まった感じがしました。
登場人物も多いので台詞も多くなりますし、感情なども台詞で言わせることがあり、興醒めするところもありました。
読み始めた原作の印象が、主人公がもっとポップな感じがするし（言葉遣いに今時の軽やかさがみて取れるから）他にも原作から離れたところも結構あるようですね。
杉咲花は確かな演技力。
そして友達役の小野花梨も今回は大人しめですが確かな演技は安定感があります。
桑名桃李はヘアスタイルで印象がガラリと変わりますね〜 キリッとした顔が印象的。今後の映像作品での活躍に期待します！
そして今回一番注目したのが志尊淳です。劇場予告で彼が演じる岡田をみて、〝なんだ？そのぽやぽやした変なあご髭はwww〟と違和感半端なかったのですが、本編見まして、なるほどなるほどそうでしたか、と納得しました。
志尊淳のキャリアを遡れば、この役を彼に当てるのは充分理解できるのでした。
宮沢氷魚は『his』『エゴイスト』と愛溢れる人を演じ、ドラマでは今爽やかなトランペッターを演じていますが今作はまぁ酷い奴を演じています。人間としてここまで酷い役は彼は初めでじゃないかな。
金子大地がとても良い人柄の役を、とても可愛く演じていて、ファンとしては嬉しい限りでした。
終盤に彼が涙するところでは、私も泣いていたよw
西野七瀬は今回は適役ってくらい、良かった。彼女はヒールの方が活きると思うし魅力的だとおもうな。
今作が気になった方には
飯塚花笑監督坂東龍汰主演の
『フタリノセカイ』をみてもらいたいです。トランスジェンダー監修は同じ方がやってます。
『市子』の戸田監督もそうだけど、新しい感覚って大切ですよね。
付記
原作と映像作品は別物！
まさに、です。
映像化には意味があったのだろうと思いますが、やはり原作の世界観とは一線を画した気がします。
プロデューサーが擬似家族を主眼にした、というようなことを読みましたが、物語の本質はそこではないでしょう。
52ヘルツのクジラの意味をしっかりと掴むには原作を読んで欲しいです。
