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52ヘルツのクジラたちのTaulのレビュー・感想・評価

52ヘルツのクジラたち(2024年製作の映画)
1.0
劇場を何度も出ようと思ったほど、陳腐で苦手な作品だった。

世界中のクリエイターが不遇な状況やマイノリティを娯楽作品で扱う難しさにチャレンジし、苦心している中、本作では、それらをあまりにも露骨に感動のための道具にしていないだろうか。不幸のオンパレードに仕立てあげ、何ひとつ真剣に掘り下げず、その悲劇性を強調して、観客の心を動かそうとするので、不自然で安っぽいドラマしか生まれない。痛みをダイレクトに撮っていて呆れたし、心情を吐露して泣き叫んだりするのは下品。杉咲花の演技くらいしか救いがないような映画だった。

自殺しかけた人を、久しぶりだね飲みに行こうと誘い、居酒屋で初対面なのに洗脳のように人生リセットさせて、引きまくった。他人の子どもを勝手に連れて返り、警察や相談所にも行かず、落ちかねない隙間があるテラスで遊ばせて、どれだけ社会性に欠けてるし危険なんだろと思った。宮沢氷魚の大映ドラマみたいな愛人落としのとことか、彼周りはもはやギャグではないか。とにかく違和感のあるシーンばかりだ。

演出面も酷いところが目につく。やたら意味もなくぐるぐるまわるカメラワークだし、カメラを気にして動いてるミステイクみたいな長回しもあった。大切なクジラの声に、悲しい音楽をかぶせたり、台詞を入れ込む過剰さで、使いまわしも多くて興醒めする。

社会問題を娯楽作品で扱うにあたり、その難しさを意識して有識者の監修を入れたり、トリガーウォーニングをした配慮は買うが、そもそもの脚本や演出がひど過ぎた。
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