ベルベー

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章のベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

原作再現という意味では最高峰だと思いつつ、映画が目指すところってそこで良いんだろうか…とか思わないこともなかった。でも浅野いにおがガッツリ製作に関わったっぽいね。ならこの映画が目指しているところはこれで良いのか。

原作リアルタイムで読んでたけどいつの間にか追わなくなったので、どんな終わったのか知らないし記憶も朧げだったけど観て思い出した。そうそう、こんな感じだった。斜に構えた言い回しとかキャラクターデザインとか、浅野いにおの漫画だ。懐かしい。

構成についても、原作再現が前提というか…なんだろう、新作アニメ映画なんだけど総集編を観ている感覚だった。制作のProduction +h.はNetflixで配信→映画で総集編という「地球外少年少女」を作ったところだが、その方法論に近いような。起承転結が映画として成立していない。既にある原作をこういう風に再構成してますよ、が上位にある気がする。

劇場版であっても原作のダレるギャグを丁寧にやる「鬼滅の刃」とか劇場版用の説明を一切するつもりのない「ハイキュー!!」とか…まあ海の向こうに目をやると、MCUやらDCUやら、単独作品として成立していない映画も増えてきているわけで、映画というメディアの作り自体が大きく変容しつつあるのかもな。三幕構成も廃れるのかもしれないね、なんて。

一方でアニメになったから気づいたこともあって、サブカルぽさでコーティングしてるけどかなりストレートなSFであったり、青春ストーリーであったりするこの話。特に門出とおんたんの関係性は、こんなに分かりやすかったんだ。良い意味で。分かりやすく「ドラえもん」や「AKIRA」(あと多分「エヴァ」じゃなくて「最終兵器彼女」…浅野いにおって高橋しんのアシスタントだったの!?)をオマージュしつつ、疎外感を抱える少女達の物語に仕立てている。

それを強く意識したのは、主演の幾田りらとあのちゃんの演技がついたということが大きい。この2人、上手すぎるでしょ…芸能人なのに上手いとかのレベルを超えていた。2人とも声が良いし、小学生時代と現在で演技を変えているし、恐れ入った。特におんたんは原作のイメージど真ん中の声と喋り方。2人で主題歌まで作ってくれるし笑。門出とおんたんを演じられる人が現れたのは、10年前の原作を今映画化する意義の一つだったかもしれない。「るろ剣」が佐藤健の登場によって実写化されたように。

しかしもう一つ、2024年に「デデデデ」をやる大きな意義があった。原作はまさにポスト震災で、UFO≒災害に右往される人々の滑稽な悲劇を描いていたけど(原作が始まったのは「シン・ゴジラ」より前なのだ!)、10年後の今観ると、SNSに振り回され、対立を煽られ、踊らされる人々の様子は、まんまポストコロナの今ではないか。

震災が生み出した「二次災害」から如何に人々は学ばなかったのか…むしろ悪化している気さえする。そんな悲しい現実を突きつけられた。関東大震災を描いた「福田村事件」だって今と構造一緒だよなって話だったわけで、本当ダメだな人類。「人類滅亡まであと半年」と言い切ってくれた方がまだマシかもしれない。100年、ひょっとせずとも1000年単位で成長せず、悲劇を繰り返す生き物だと思うと…。

声優関連だと、イソべやん=杉田智和は想像通り!だとしてデベ子=TARAKOはそう来たか!と膝を打つキャスティングだったので、この唯一無二の声がもう聞けない寂しさを改めて感じた。おんたん兄は諏訪部順一ボイスで喋ることで更に面白くなってる笑。あと、門出母は柚木涼香ぽく聞こえたので「『ゲ謎』で柚木涼香?と思った声が種﨑敦美だったから、ということはこの声種﨑敦美だ!」でクレジット見たら柚木涼香だった。種﨑敦美はキホちゃんの方だった。だから分かんないって!毎回声違い過ぎでしょ!
ベルベー

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