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デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章のnetfilmsのレビュー・感想・評価

4.0
 原作漫画は未読というか1ページも読んでおらず、ポスター・ビジュアルに惹かれて観に行ったのだが何が何だかさっぱりわからなかった。2人が暮らす街の上空には、3年前の8月31日、突如宇宙から出現し未曽有の事態を引き起こした巨大な〈母艦〉が突如姿を現す。そこから先は『シン・ゴジラ』のアニメ版のような趣なのだが、セカイ系の物語の様に加速度的に世界は崩壊への道を辿って行く。然しながら母艦と日本政府の攻防はその後ちっとも描かれぬまま3年が経過し、地球の運命がどうなるのかは棚上げにされているようだ。そもそもこの母艦は日本の上空にしか登場しないのか他の土地でも起きている現象なのかは明示されぬまま、攻防は棚上げにされたまま、地上ではある種の平和にマヒした女子高生の青春群像劇が繰り広げられる。一瞬、「かどで」こと小山門出と、「おんたん」こと中川凰蘭は小学生くらいにも見えるが実は高校生で、それなりに青春を謳歌する同級生とは違い、オンライン・ゲームに明け暮れる。

 とにかく「かどで」と、「おんたん」の台詞がいちいちシュールで楽しい。さとり世代ゆえのシニカルな冷笑系というか、明日世界が滅んでも今日が楽しければ全てOK的な空気が蔓延するのは彼女たちがバブルを知らないからで、少しずつ沈みかける船にみんなで乗れば怖くないの状況になり、遂に平均年齢が50歳になった高齢化社会の我が国では、彼女たちこそがこれからの主役なのだ。だけど多様性の中に生きる彼女たちはみな弱者で、『エヴァンゲリオン』の碇シンジのその後を生きる繊細で脆くて傷つきやすい世代なのだ。漫画は創作で自由だから、浅野いにおは実際に起きた事件をモチーフにしているであろう安倍晋三暗殺事件やパンデミックやそれによって蔓延する厭世観をいとも簡単に物語の中に落とし込んでしまう。TARAKOさんの訃報を受けての追悼文もあるが、今作の主人公「かどで」と「おんたん」の2人にYOASOBIのボーカルikuraちゃんこと幾田りらとあのちゃんをキャスティングした時点で大勝利だったのではないか。完全な俄かだが後編も楽しみ。
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